5ー心理テスト2ー

  ―2020年11月8日12:57―


 桜奈と協力してお昼ご飯を作り、洗い物を片付け、リビングのテレビ前で仲良く肩を寄せ合って座り、待機している。

「友達から聞いたけど凪さんは上田市出身で上田高校の出身でもあるんだって。知ってた?私はこれ聞いたときに驚いちゃったよ」

 そう、凪恒二は上田高校の先輩であった。なんなら弓道部の先輩であり、兄さんと同い年だ。

「知ってたよ。兄さんと同い年だったしね。でも犬猿の仲だったらしいけど。話したことなかったっけ?」

「ないよ!」

「なら今度弓道場に来てみな、凪さんのサインが賞状と同列に並べられてるから」

 話している僕らの裏でテレビ越しに凪恒二が中継され、喋り始めている。

「「……でね、今日はね皆さんと心理テストして、それについた話をしようかな、なんて思っているんですよ。」」

 もう既に二回も聞いてる話だ。そのため注意して聞くこともなく、画面外のこちらはこちらで自由に話している。

「心理テストなんて中学生ぶりだよ。答え決めたら教えてね」

「なら勿論桜奈から教えてね」

「……」

 おい、だんまりを決め込むんじゃねぇ!と心の中で叫んでおく。

「「じゃ、さっそく始めましょうか。

 では質問です。あなたの最愛の人が罪を犯し、死刑宣告をされました。そして、あなたが殺し方を選ばなくてはなりません。最愛の人は恋人でも家族でも、あなたが最愛だと認定できる人なら誰でもいいです。その場合どの殺し方を選びますか?四択ですよ。

 ① 凍死 真冬の雪山に手錠・足枷をつけた状態で放っておきます

 ② 焼死 油をかけた小屋に閉じ込め、そこに火を放ちます

 ③ 脳死 これは実質的な死を与えるわけではなく、植物状態にします

 ④ 失血死 体に六発撃ちこみ、銃殺します……」」

「どう、影くんは決まった?」

「決まんない。キメラレナイ。」

 決められない、おかしい。何かがおかしい。そんな違和感だけが僕を蝕む。そんな中[凍死]という言葉が頭で詰まる。確実に【現在軸】と【タイムリープ1】で聞いてないはずの言葉。短い時間ではあったが『リープしているだけのはずなのに僕が影響を与えていないものが変化するわけない』と結論づけ、僕の勘違いだと認識する。

「えーっと、僕は桜奈が死ぬのが嫌だから決められないな。桜奈はどれにした?」

「私も影くんと同じ。死んでほしくないからね」

 笑みを浮かべた横顔。僕としては嬉しそうで何よりだ。


 話が始まって約三十分が経過するころ雨がガラスに突き刺さり始める。先ほどまではきづけなかった雨は次第に強くなっており、今ではガタドタと音を立てている。桜奈は「やばい」と立ち上がり自室に向かっていった。おそらく開けっ放しだった窓を閉めに行ったのだろう。

 そして数秒後に階段を下る足音が聞こえる。

「急に雨降ってきたね。窓閉めてきたの?」

「そうだよ。今日は珍しく暑かったから開けておいたのに裏目に出ちゃった」

 てへぺろ、と効果音が出そうなポーズ。

「洗濯物は大丈夫なのかい?」

「今日は出してないから問題なし!」

 右手でサムズアップし、それを前に突き出して意気揚々と言う。別に誇るところでもなかろうに。

「そうだ、凪さんの話が終わったらプログレスやろうよ」

「いいよ。ソフトは何にする?」

 こう返すも顔は苦い顔をしている。

「ちょっと待って、桜奈は二台も持ってたっけ?あれは高いんだよ」

「それはね、一週間くらい前にお父さんが「影二君の父の幻郎さんが桜奈にいつも仲良くしてくれてありがとうと言って置いていった」って言ってたんだよね」

 普段は父親に無関心な彼も『あの野郎、余計なことしやがって』と思わずにはいられなかった。

「そっか、あるんだね。じゃあ後でやろっか。」

 憔悴した顔であった。親においしいところを奪われたことが相当堪えたのだろう。

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