14ー再チャレンジー
―2020年11月8日9:56―
本日は雲一つない晴天である。
「おはよう!」
「おはよう!今日も可愛いね!」
「ごめんね、ちょっと待たせちゃった?」
【現在軸の過去】では着いたとほぼ同時に声がかけられた。なので今回は心の準備をこの場で整理するために少し早めに到着していた。[待っていましたよ]という雰囲気が漏れ出ていたのかもしれない。次に生かそう。
「いやいや、まったく待ってないよ。今着いたところ」
「なら良かった♪どこからまわる?凪さんのトークショーはい方は1時から、遅い方だと3時からだよね」
「ねね、凪さんの話さ本当に聞く?行きたいところがあるんだけど」
「影くんが行きたいところがあればそこに行くのが一番いいよ。今日は誕生日だしね」
物寂しそうな顔をした後に笑顔を作って言うのは反則だ。嘘ついた自分がどうしようもなく卑しい。
それに僕の誕生日を祝ってくれるということで今日はデートしているのだから、桜奈の大好きな凪さんに会ってもらおう。
そう考え「やっぱりいいや。今日はゆっくり桜奈と一緒にいたいしね」と言う。「無理しなくてもいいよ」と言ってくれるが、これは僕が好きでやっているので提案を受け入れるつもりはない。
「わかった。じゃあ、1時からのやつね」
むすっとした顔に笑顔で頷き返す。
―2020年11月8日12:58―
イベントホールは満員。影二たちはすぐに抜け出しやすいように端の席を陣取る。中ほどの席も空いていたため桜奈が「中に行こうよ」と言ったが断固拒否。一切譲らなかった。
少々のざわつきの中、定刻より早いが凪恒二が話し始める。
「今日は本当に呼んでくださりありがとうございます。いや~、上田はいいところだよね!戻ってきたいと常々思っていましたよ………………」
以前聞いた頭から離れない話と同じだ。僕は凪さんの顔と桜奈の顔が同時に見られる位置に座っているため桜奈の喜んでいる姿も確認できる。
「じゃ、さっそく始めましょうか。
では質問です。あなたの最愛の人が罪を犯し、死刑宣告をされました。そして、あなたが殺し方を選ばなくてはなりません。最愛の人は恋人でも家族でも、あなたが最愛だと認定できる人なら誰でもいいです。その場合どの殺し方を選びますか?4択ですよ。
① 縊死 ひもで首を絞められます、現在日本で行われている死刑方法ですね
② 事故死 高さ15mの位置から質量15㎏の鉢植えが頭上に落ちてきます
③ えつ死 温度95度のサウナ室に3時間監禁します
④ 焼死 油をかけた小屋に閉じ込め、そこに火を放ちます
因みにどの執行方法でもあなたが手を下すわけではありません。さぁ、どれか選んでください。時間は30秒とりましょう。」
凪恒二が話している間、ずっと桜奈の顔を見ていた。だが彼女の息遣い、顔色は変化している様子はなかった。
「変な心理テストだね。影くんは何選んだ?」なんて言われるので拍子抜けもいいところだ。桜奈からしたら対岸の火事であったろう。胸をなでおろす。
「僕は桜奈が死ぬ所なんて想像したくないから選ばなかったよ」
その瞬間、右方向から強めのグーパン。二の腕が痛い。
「逆に桜奈は何番選んだの?」
「意地悪な渉くんには教えない」
桜奈はすねた犬のようにそっぽを向く。僕は何とか機嫌を直してもらう。
そんな問答をしていたら会場がざわめき立つ。どうやら心理テストの答えの発表が終わってしまったようだ。
その後も凪さんの話は九十分ほど続く。だが、別のことに集中していたせいか全く頭に残らなかった。
凪の話が終わり、二人はここを出るようだ。
スゥ――サァ――
「あー、雨降ってるじゃん。影くんどうしよっか?」
「ね、天気予報だと晴れだって言ってたのにね。傘ある?」
「もちろんあるよ」
影二と桜奈はバッグから黒と青の傘を出し、広げ、街中に繰り出していく。
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