11ー高校二年生ー

  ―2020年11月3日13:51―


 紅玉の湯の次に一行が入ってるのはサウナ室である。「温泉に来たならサウナやろ!!」というノリで、今現在温度91度のサウナ室で蒸されている。サウナストーンと一周12分の時計だけが置いてあり、彼ら四人以外誰もいないので先ほどよりも自由にしゃべる。

「あついよ~」

「山田は暑いの苦手そうだもんな」

 サウナ室の木でできた椅子に座るととびだしていたものがより強調され、狛太はそこを見ながらそう言う。

「おいっ!どこ見ながら言ってるんだよ!」

 影二は標準より少し細い、煌輝と狛太は腹筋がかすかにだが割れている。なので金太郎の腹部が余計に目立つ。

「金ちゃんじゃないけど本当に暑いね。普通は八十度くらいだよね?」

「たしかそのくらいだったと思うよ」

「熱いって言うならよ、我慢比べしようぜ」

 煌輝の提案により突如始まる我慢比べ大会。景品や罰ゲームがなくとも張り合ってしまうのは男子高校生の性なのであろう(一人21歳が混じっているが)。

 突如できたゲームはルールも突如に自然と出来るものだ。そのできたルールというのはじゃんけんして負けた人は腹筋(上体起こし)二十回というものだ。こんなことができるのもここには他に誰もいないからだろう。もちろん他のお客さんが入ってきたらやめるつもりだ、四人も場はわきまえる質であるので。

「じゃん・けん・ぽん」「あいこのせ」なんて言いながら、すっぽんぽんの状態の男四人がじゃんけんし、腹筋をしている。仲睦まじいことこの上ない。

 初戦の結果は煌輝が敗北だ。難無くこなす。起き上がるときに体を伝う汗が腹筋を滑り落ち美しい。

 しかしながら、ここで傍から見ていた三人は重大なことに気づいてしまう。何と彼のシンボルがヘッドバッドしてしまっているということに。

 煌輝が既に一回やっていることと思春期独特の感情で「別のゲームにしよう!」なんて言えるはずがない。

 すなわちこのゲームはつづく……


 サウナに入って二分が経過。

 煌輝が連続で敗北し、既に40回の腹筋を終えている。さすが現役運動部というべきであろうか。汗をかいているが、それは疲れているわけではない。

「お前ら、イカサマしてるんじゃねえの?」

「さっきの今で相談する時間無かったろうが」

「煌輝の体力が戻る前にさっさとやろうよ」

「うぅ……お前ら、覚えてろよ……」

 再びじゃんけんが始まる。

 負けたのは金太郎。初めて負けたのに顔を引きつらせている。はじめのうちは何ともなくやっていたが段々と顔が梅干しになる。

 何とか15回までは体を起こすことはできたようだが、ここからはきついようだ。

 別に時間制限を課しているわけではないが、既に腹筋を始めて4分が経っている。

 残りの力を振り絞り最後の5回を終わらせる。

 彼の体は汗まみれ。そして、明らかにげっそりとしている。

 金太郎は腹筋20回に幕を引くと同時にサウナ室にいることにも幕を引く。

「もう無理」と言い残し、颯爽とこの場から去っていった。

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