4ー上田高校弓道部ー

  ー2020年11月2日16:10ー


 五、六時間の保健と日本史を終えて部活の時間となる。学校のところどころで轟く掛け声。走りだす運動部。動き出した学校。

 さっきまで停止していた学校が嘘のようだ。弓道部ではどうだろうか。


弓道部では

   拝礼

    ↓

   瞑想

    ↓

 軽ミーティング

    ↓

  型の確認

    ↓

   本練習

    ↓

   瞑想

    ↓

   清掃

    ↓

   拝礼

のルーティーンを行っている。


 衣擦れの音一つ聞こえない

 無の世界が構築される

 五分間だけの世界

 静寂が聞こえる


 現在、舞台では影二ら一、二年生の男女13人(男子 7、女子 6)が体を弓道着に包まれ、座禅を組み、瞑想中。わずか十二畳ほどの空間はとても神秘的であり、触れてしまえば崩れてしまいそうだ。

 マネージャーがスマホのストップウォッチで時間を計り、「やめ」の号令で群れが動く。立ち上がり、軽ミーティングで曜日によって異なる本練習を部長の中条煌輝から伝えられる。週初めには命中率を測定して、先週と比べたり、今週の目標を決めたりする。今日は月曜日のためそれだ。


 男女でペアを組んで測る。男子は一人余るのでマネージャーとだ。測定日は型の確認はなくすぐに始まる。

 本日の僕の相手は南澤千春。

「よろしくお願いいたします。」

「よろしく!」

 彼女は僕が高校時代によくおもちゃに……ゲフンゲフン、いじってた人だ。

 八月という遅い時期に弓道部の入部をした彼女はとても面白い子だ。いじっても嫌がる様子もないのでいじっていたというわけだ。

「今日はあまりいじらないのですね。なんか良いこと又は悪いことありました?」

「そうか、そうか。そんなに千春がMだったとは知らなかったよ。ごめんな」

「違いますって!!!」

 影二は冷や汗をかき、千春は一人でもじもじしている。異様な光景過ぎである。

『言葉で頬を殴られた気がするが上手く切り返せた。危ない、危ない。今日だって既に二回はいじってるのに。過去の僕、変だぞ!!』

 心の中でそう過去の自分に向けてわめくが無駄なあがきだ。

 そうこうしているうちに他のペアたちの準備が終わり、紙が配られる。


 配られた紙には百もの的を模した同心円状に線の引かれた図形が書かれている。的に刺さった矢の位置を赤ペンで対応する位置に書き入れ記録する紙である。

 一度に矢をつがえ放てるのは四人まで、前列と後列に別れて一射ごとに交代する。弓を引くのは男女別れてであり、一方が弓を引いているときはそのペアが記録する。

 全員が持ち場についたようだ。

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