第一章 過去篇ー柳暗花明ー

1ーあり得べからざる再開ー

  ー2020年11月2日 8:13ー


 影二はこの状況を調べるために様々なことを試してみたいという好奇心と少々の恐怖心があった。が、それらを抑え、どうせタイムリープの話しをしたところで頭がおかしいと処理されるのがオチなので誰にも悟られぬよう気張っていた。校舎三階端にある当時のクラス(二年二組)に懐かしみながらも少し恥ずかしい気持ちで入っていく。

 自らを取り繕うのが上手かったのでここまではすんなりといった。だがしかし、突然目の前に彼が人生でたった一人好きだった…、愛した人間が目の前に現れたらどうだろうか。そして、その人はリープする前の【現在】ではすでになくなっていたとしたらどうであろうか。それは火を見るより明らかだろう。

「スゥ…ッ……ッ……」

 影二は彼女の顔を確認して安堵と深い悲しみに陥ったのだろうか、その場で大粒の涙を滴らせながら片膝をついたのだ。偶然にも、その画はまるで姫に忠誠を示す騎士ナイトのように。

「えっ、どうしたの?」

 若干おどけた顔でありながらも、猫をなでるような口調で話す女の子は影二の人生でひとりだけの彼女だ。彼女は既に【現在】では亡き人となっている。名前は山城桜奈やましろおうな


 山城桜奈は上田市に住む一般的な女子高生であった。マドンナというほど美しいわけではないが素朴な可愛さがあり、天然な面もあり一部の男女からとても人気であった。そして、彼女を射止めたのがわたり影二、その人である。

 そんな彼女が亡くなってしまったのは2020年11月8日日曜日のことである。

 その日、11月8日は影二の誕生日ということでイチャイチャとデートをしていたのだ。

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