本作は、現実世界に怪獣が現れる怪獣現象を追ったモキュメンタリーSF。
作中世界に怪獣が現れた時のことと、その前後の出来事を記した年表の書かれた、とある組織の内部文書から本作はスタートします。本作は、こうした関係者の記録や調査資料、文字起こしされた映像記録などの断片的な情報を作者の提示する順番で読み進めていくことで、物語全体が少しずつ見えてくるという作品。
怪獣を題材にしたモキュメンタリー小説というと虚淵玄が原案をつとめたアニメ『GODZILLA』のスピンオフ小説である『怪獣黙示録』などもあり、個人的には最近読んだ『ダリア・ミッチェル博士の発見と異変 世界から数十億人が消えた日』などが早期されます。
断片的な情報を与えながらも、設定開示のタイミングが計算されていることで、作中世界で怪獣現象を追っている人間と同じような思考を辿れるようになっています。
締めも、壮大ながら物語としてしっかりと収束しており、読後感にもモヤモヤしたものは特に残らないバランス。SFとは頭でっかち選手権って誰かが言ってた記憶がありますが、怪獣に対する考察もそういう部分はたぶんに大きく、本作においての怪獣の定義をしっかりと決め打ちしているのもベネ。
是非多くの人に読んでもらいたい傑作。