第10話 鬱展開をとりあえず回避
俺、レイヴンは原作で
原作ではこのイベントから立て続けに全てを失う流れになっているのだが、今回俺はその1つ目の回避に成功したわけだ。
だからとりあえず鬱展開になることはしばらくないだろう。
「よくやったぞレイヴン。盗賊共を掴まえてしまうなんてな」
ワシャワシャと俺の髪をグシャグシャとしてくる父さんに答える
「俺だけの功績じゃないよ。ね?サーシャ」
サーシャに目を送る。
「お前もご苦労だったな」
そう労ってから俺に目を向けてくる父上。
「だがしかしお前のステータスは見せてもらったが。いつのまにあんなに強くなっていたんだ?」
俺はサーシャに目をやった。
「それはサーシャの口から聞いたら?」
ぶん投げたわけではない。
サーシャの口から言うことに意味があると思ったから。
「サーシャはあなたの教えを裏切りレイヴン様に剣を教えましたです」
「剣を?」
「ですが、そのお陰で今もブラッドフレアは存続しています。あなたが何を言おうと私の判断は結果的に正しかった、サーシャはそう思っておりますです」
「そ、それは……だな」
サーシャにそう言われ特に何か言い返すこともできないらしい父上。
更に畳み掛けるサーシャ。
「私が剣を教えていなければこの家は既に血に染まっていたでしょう」
「だがお前が約束を破った事実は消えんぞ」
なんとかそんな言葉を返す父上に俺は答える。
「父さん。約束を破ったのは俺も同罪さ。言いつけを破って俺は剣の修行をしたのだから」
「そ、そうだが」
「今の父さんは俺とサーシャのおかげで生きてる。そのサーシャの苦労を今は労った方がいいんじゃない?それと俺はこの訓練の成果を認めてほしいと思ってる」
「うぐぅ……」
何も言えないのか口ごもる父上。
実際そうだろう。
全部結局のところサーシャが俺に剣を教えたから今もこうして呼吸をしていられるのだから。
「だがぁ……」
そこまで言いかけた父上を止めたのはエレナだった。
「お父様。坊っちゃまの言い分は正しいものと思われます」
エレナは俺たちに味方をしてくれているらしい。
だが
「一つ気になることはあります。坊っちゃまが今日急にかくれんぼに誘ってきたのは、このことを知っていた、からなのですか?」
「な、なぜ知っていたのだ?!」
そう聞いてくる父上に俺は答えた。
「俺の目は未来を映すんだ」
原作を知っている、なんて言っても首を傾げられるのが関の山だろうと思った俺はいつものように言った。
「なんと、未来予知か?」
「まぁ、そんなところだね。今まで黙っていたけどさ」
「ちなみに今回の襲撃に関して他になにか知っていることはあるのか?」
「この前父さんは伯爵の家に向かったよね?あの伯爵の家から今回俺の誕生祭が行われ警備が薄くなるという情報が漏れたんだ」
俺はそう言って今回仕込んだことを説明する。
あの家に一日早い日付を伝えていたことだ。
「お、お前そんなことまでしていたのか?」
「うん。おかげで情報の漏洩元は特定できたよね」
「たしかに、そうだが。そういうことは言って欲しいぞ」
(この人に話してもなぁ)
俺はその言葉にははっと軽く笑うだけで終わった。
その時エレナがサーシャを見ていた。
「それにしてもスラム流の剣技を教えた、か。言ってくれれば私がちゃんとしたものを教えたのだがな」
「あなたの剣技には柔軟性がないです。実戦では役に立たないでしょう。一言で言いましょうです。レイヴン様をお守りできるのは私、だとです」
「な、なんだと?」
二人の間で火花が飛び散りそうな視線が飛び交うが俺はなんとかその場を収めた。
「落ち着いてよ、ね?二人とも」
そう言うとエレナは舌打ち一つしてサーシャから視線を逸らした。
やはりエレナはプライドが高いらしいな。
サーシャもそこそこ高そうだけどエレナの方が高そうだ。
「まぁいい。サーシャの言うことももっともだな。今回のことは私の判断ミス、とする。サーシャ。これからもレイヴンを鍛えてやって欲しい」
「お任せくださいです」
と今回のことを不問にすると言う父上。
それから
「伯爵の件については私から伯爵に探りを入れておく」
と、調査を進めてくれるらしい父上。
「お前たちの方は学園に向かって勉学に励むといい」
そう言って解散を宣言する父上。
原作ではもっと後に控えていたはずの、俺の学園生活イベントが明日から始まるようだ。
作中一番ひどい結末を迎える悪役に転生したけどそうならないように頑張ることにしました。原作では闇落ちしますが回避します。 にこん @nicon
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