そこで彼女は……

タカ 536号機

彼女が知らない男と共にラブホへと向かっていく


 いつもの僕の作品を見ている人は大分今回は僕のノリが違うので合わない場合は即座に読むことをやめることをオススメします。


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「な、なんで……」


 俺こと朝川 大翔ひろとは目の前の光景を信じられず固まってしまう。

 突然だが俺には成川 彩音あやねという少し天然気味だが可愛い彼女がいる。少しウェーブがかった艶めく黒髪のショートにやや童顔で整った可愛い顔立ち。性格も優しく俺を甘やかしてくれる最高の彼女と胸を張って言える人物だ。


 しかし、今俺は……そんな大好きな彼女である彩音が知らない男の手を引き明らかにラブホを指差してながら歩いているのを目撃してしまったのだ。

 これは明らかなる浮気。いや、それ以上のこと。しかし普段の彩音を見ている俺からすれば信じられない光景で別人じゃないかと考えるが彼女の顔を見間違えるほど俺は鈍い奴じゃない。


 何度目をこすっても彩音だ。俺は気づけば近くの電柱に身を潜め様子を伺ってしまっていた。……クッソ、見たくない。見たくないのに気になってしまう。今からでも止めに行くべきか?


 ……いや、そこで彩音に酷い言葉を投げかけられてしまえばもう俺は立ち直ることが不可能になってしまうだろう。あぁ、本当に俺って奴は〜。


「でね〜……」


 ここからじゃ遠すぎて何話してるのか分からねぇな。だが唯一観察してみて分かったことがある。彩音の隣にいる男めっっっっちゃイケメンじゃねぇか!!!

 遠くからしか見えないので顔がしっかり見えているわけではないがそれでも伝わってくる圧倒的なイケメンオーラ。

 そしていつものように感じる彩音の美少女オーラ。


 似合いすぎてるだろ! どこのお似合いカップルかと見紛うほどだが彩音は俺の彼女のはずだ。しかし、これではどちらが本当の彼氏か分からない。

 いや、もう彩音の中では俺はもう終わった男なのかもな。……随分顔を赤くして話してらし。

 高校2年生で付き合い初めて6ヶ月、最近ようやく初キッスをしたばかりだというのにこんなところで終わってしまうのか。

 見届けてしまえば終わりだと言うのは分かっているが俺の体は電柱から離れず視線も彩音とイケメン男の方に固まったままだ。


 うおっ!? 彩音がついに足を動かしていく。

 見てられない。俺は思わず目を背けて1分ほどなにかと戦うかのごとく目をつむりようやく目を開ける。

 きっともう彩音はいないんだろうな、そんな悲しい思いを抱きながら俺が目を開けるとそこにはさっきと変わらず彩音とイケメン男がラブホの前にいる。


 というか彩音はなんとか入ろうとイケメン男を引きずっているが、肝心のイケメン男の方はなにかを叫びながら抵抗してる。聞きたいがこの位置からじゃ聞けない。

 というか今の感じでなんで入ってかないんだよ! まだ、いなくなってたら俺としても決心がついたのに……。


 いや、それもそれで嫌だがいつまでも目の前でこんなことを見せつけられるのは拷問にもほどがある……。なにせ世界で一番見たくないものを見てんだ。長くなんて保つはずないだろう。

 さっきから汗は凄いわ、吐き気もするし、足だってガクガクだ。正直、今立ってるのが奇跡みたいな状態なのに……終わってくれない。


 俺がそんな苦痛に耐えていると、さっきまで抵抗していた男がついにキレたのか彩音に対して何やら怒鳴り声を上げていた。マジでどうゆう状況なんだよ。修羅場ってんの?

 ……彼氏である俺が乱入したわけでもないのになんで修羅場起こってんだよ。

 もう、分からん。分からんがさすがに傍観しているわけにもいかないだろう。


 そもそももう長くは保たなかっただろうし、むしろ話を聞いて俺自身の手でケジメをつけてやる……。


 俺はようやくそう決心すると電柱に隠れるのをやめて彩音とイケメン男の方へ向かって歩いていく。

 もう、恐れない。なんて言うつもりはない足はガクガクで手だって震えが止まらない。今からどんな絶望を叩き込まれるのかも分からない……でも。


「おい、彩音……だよな」

「行こうよぉ〜……って大翔!?」

「大翔だと?」


 俺が姿を現すと男を引きずってなんとかラブホへと連れ込もうとしていた彩音は固まり、イケメン男は俺を見て驚いた表情を見せるとまじまじと俺の姿を確認してくる。

 ……間近で見ると本当にイケメンだな。若干目はキツイ感じはあるがなんかこう安心させられる感じ……いや、多分浮気相手の男になんで俺安心感抱いてんの?


 変態なのだろうか?


「おいっ、馬鹿! 黙ってねぇでテメェでなんとかしろよ! あっ、大翔さん本当にすいませんね」

「えっ、あっいや……」


 そしてイケメン男は彩音を怒鳴りつけると俺に対し頭を下げ謝ってくる。……これは最早どうゆうことなのか。俺の脳はパンク寸前である。


「コイツにちゃんと謝らせて事情話させるんで……。コイツ……っというか馬鹿彩音の彼氏さんでしたよね?」

「う、うん。そうだけど?」


 なんで知ってるんたと思ったが彩音がこのイケメン男に付き合う際に言ったのだろうか?

 しかし、そうだとしてもこの男の対応が分からない。俺が絶望よりも最早なにが起こっているのか分からず疑問符で頭を一杯にしていると目の前のイケメン男が爆弾発言をする。


「いや、本当に本当にウチの鹿がすいません!!!!! 恐らく心配して声をかけに来てくれたんですよね? 本当にっっすいません、こんな奴別れるなら別れちゃってください」

「ちよ、ちょっと隼人!?」


 真剣に俺に頭を下げそんなことを言うイケメン男。……姉貴? 姉貴ってなんだっけ? あれ、姉貴って……。


「ん? ってことは君は彩音の弟さんってわけ?」

「そうです。この馬鹿な姉貴の弟。成川 彩音の弟、成川 隼人って言います。本当に今回のことで失望されたなら別れた方がいいです」

「いや、というか純粋な疑問なんだけどなんで2人してラブホの前に?」


 まだ処理が追いつかない俺がそう尋ねると隼人くんは心底不快そうにこう告げた。


「この馬鹿な姉貴のせいですよ」

「隼人!?」

「姉貴に口答えする権利ねぇから! つうか早く話せよ、自分で! お前の彼氏さん普通なら怒鳴って帰るところを聞いてくれてんだぞ?

 優しい彼氏さんだからって甘えすぎんな!

 自分で言え!」

「……分かった」


 すると俺が現れてから終始俯きっぱなしだっあ彩音が顔を上げて俺に目を合わせてきた。


「あ、彩音……一体どうゆうことなのか教えてくれるか?」

「う、うん。実はね。私と大翔……最近そのー初キスもしたじゃん?」

「し、したな」


 少しあの時のことを思い出し体が熱くなってしまう俺。


「そ、そのーだからなんというかこうゆうこともやるのかなぁと思ってどんな雰囲気なのかみ、見に行こうとしたのっっ」


 彩音的に凄く恥ずかしいことだったのか顔を真っ赤にしてそんなことを言う。


「でも、その〜私1人じゃ入れなかったから男手が必要で……だ、だからと言って大翔に頼むわけにもいかなくて隼人に入り口だけ見る為に着いてきてもらったの……」

「と、そこで俺がブチ切れてこんな感じです。ほ、本当にご迷惑おかけしました。俺が止めれたら良かったんですが……すいません!!!」


 そう言って兄弟揃って頭を下げてくる。対する俺はと言えば……。


「はぁ〜〜、良かったぁぁ〜〜」


 限界を迎えていた足から力が抜けてその場にへたり込んでしまう。


「あっ、あれ? 怒ってないの?」


 そんな俺の様子を見て彩音が不思議そうな顔をする。


「怒ってるよ? ……でも、それより安堵感が大きいってのと俺も甘えちゃってたってのもあるしな」

「えっ!?」


 俺は心から事を話す。そう、俺は優しくそしてリードしてくれる彩音に甘えすぎていたのだ。その結果、彩音は俺を甘やかせようと俺をリードしようと焦りなんとか勉強しようと今回の事に望んだのだろう。

 その結果、弟くんにも迷惑がかかってしまった。


「マジで……優しすぎるな」

「でしょ……正直、反則だと思うんだけど」


 そんな俺の言葉を聞いてか彩音と隼人くんはヒソヒソとなにかを話し始める。そして隼人くんは俺の前に立つと、


「今回の件はマジですいませんでした!!

 姉貴の方にはキツく言い聞かせておくんで……。彼氏さんなら分かってると思いますがこいつ考えなしの馬鹿なんで……。今回のことも彼氏さんに見られたらとか考えてなかったと思うんです。そう言う意味だとマジで分かってた自分が止めきれずすいませんでした」


 そして再び俺に向かって頭を下げて、


「じゃっ、あとはお2人でよぉく話し合ってください。自分は邪魔になると思うので帰りますね」


 そう言うと走って去っていってしまった。


「……優秀で気がきく弟くんだな」

「うん、私にはもったいないくらいの……」


 そして2人きりになった俺たちに微妙な空気が流れる。しかし、沈黙に耐えきれなかった彩音が大きな声で俺に謝罪をする。


「本当っっっにごめんなさい。私、本当に考えなしだった。大翔に見られたら誤解されるとか大翔を傷つけるとか考えるべきだったのに……許してなんて言うつもりはないけど本当にごめんなさい。もし、大翔が今回の件で私を失望____」

「別れていいなんて言うなよ?」

「ふぇ!?」


 俺は彩音の口に手を当てその言葉を遮った。


「さっきも言ったが俺は彩音が浮気じゃなくて安堵したんだ。俺は彩音のことが好きだ、だから償うと言うなら俺の側にいてくれ!

 ずっと! 離れないでくれ! それが俺がお前に求める罰だ」

「そ、そんなことでいいの?」


 彩音は不安そうな顔をする。大方、俺に出会ってしまい自分がしたことの愚かさに気づいてかなり落ち込んでしまっているのだろう。

 だが……。


「俺にとってはそんなことじゃない。大事なことなんだ。俺はお前といつまでも一緒にいたいっっ」


 そんな天然で考えなしで迷惑ばっかりかけるけど……誰より優しくて俺の為にオシャレを学んだり苦手なホラー映画でも俺の為に勇気を振り絞ってついて来てくれる彩音のことを俺は好きになったのだ。

 そこに間違いなんてない。


「ひ、大翔っっっ//」

「それに今回いい事も分かったしな」

「えっ!?」


 俺が少し意地悪な顔を見せると戸惑ったような顔を見せる彩音。


「彩音がそういう事を俺としたいと思ってたんだろ? それってさぁ……」

「あっ……!!//」

「しかも俺に隠れて調査まで……意外と彩音ってエッチだよなぁ?」

「うぐっ!!」


 俺の指摘にドンドン顔を赤らめていく彩音。今日は俺も散々不安な気持ちになったんだ。これくらい許される……よな?


「まっ、それについてお楽しみにしておくよ」

「ひ、大翔……」


 少し恨めしげに俺を見る彩音。俺はそんな彩音の顔を見て俺の彼女はやっぱり最高に可愛いなと思うのだった。



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 いかがでしたでしょうか? 自分もこういうガチ系の恋愛の書くのは初めてなんでかってが分かりませんでしたが……。


 一応カクヨム短編コンの為のものです。面白かったら星や応援などの評価をお願いします!! 中間は突破目指してるので。ワンチャン続編もあるかも?


 で、では!



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