8月(その3)

   

 八月の後半、大きな変化があった。

 玄関とその近辺の廊下に加えて、新たに子犬のためのスペースが用意されたのだ。


 最初の方で書いた通り、普通トイプルードルは室内犬として飼われるだろうに、私も父も「自分たちが暮らす部屋に犬を入れたくない」と考えていた。

 しかし私は、こうも思っていたのだ。使っていない部屋ならば「自分たちが暮らす部屋」ではないから、犬を遊ばせても構わないのではないか、と。

 つまり、亡くなった母の部屋だ。

 厳密には全く使われていないのではなく、私の寝室よりエアコンの効きが良いので、勝手に昼間「小説執筆のための部屋」として私が時々使っていた。でも「時々」であり、机と椅子にさえ犬が乗らなければ、それこそ子犬をかたわらに置いたまま執筆活動が出来るではないか。

 ペットが一緒にいる状況で、自分は自分で小説を書いたり、インターネットを使ったり……。先ほどの「自分たちが暮らす部屋に犬を入れたくない」とは矛盾するが、それはそれで少し憧れる環境だった。


 とはいえ、それは私の勝手な考え方に過ぎない。父にはそのような気持ちはなかったのだが……。

 以前に犬を室内飼いしていたという知り合いの家にうちの子犬を連れて行き、部屋の中で遊ぶ様子を見て、少し気が変わったらしい。

 うちでも二階の部屋に、子犬を上げるようになったのだ。


 外を歩いた足のままでは汚れるかもしれないので、足だけはシャワーで洗って、それから二階へ。子犬自身は自力で家の階段を上がれず、こちらとしてもそこまで自由にさせたくないので、私が抱きかかえて連れて行く格好となる。

 だから子犬が二階の部屋で遊べるのは、だいたい毎日一回、午後の一時間か二時間くらいだけ。それでも、今まで入れてもらえなかった家の中に入れてもらえるだけで、とても嬉しそうだ。

 庭で遊ぶのと同じように、おもちゃやボールや円盤などを咥えたり振り回したりして暴れ回っている。サイズ的には子犬に合うかと思って猫用の紙製おもちゃも買い与えてみたが、それはすぐに壊してしまった。


 なお庭と違ってベッドがあるわけだが、飛び乗って遊ぶにはちょうど良い高さだったらしい。

 しかし使い古されたベッドなので、マットレスの端から糸が垂れている。絨毯も毛羽立っている部分があり、それら糸くずのようなものを子犬は口に入れてしまうし、噛みちぎってしまう。

 だから常に見張っておく必要があり、残念ながら「子犬をかたわらに置いたまま執筆活動」というのは難しかった。


 二階の部屋で子犬が過ごす当時の様子は、2022年8月31日の近況ノートに写真を掲載している。


https://kakuyomu.jp/users/haru_karasugawa/news/16817139558436498782

   

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