第30話 二度目の初夜*

軽い性描写が入りますので、苦手な方は線(--)より下をスクロールしない選択もあります。ちなみに具体的な描写はしていません。


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結婚から7年経ったが、寝室を普段から共にしていてもラルフとゾフィーはまだ白い結婚絶賛継続中だった。それでも蝸牛のようなのんびりとした歩みで頬や額へのキスから唇へのキスへ何年もかけてやっと来た。


ルドルフへの罪悪感はゾフィーの心の中で完全にはなくなってはいなかった。でもそれは、ゾフィーがラルフを受け入れられない理由にはもうなっていなかった。ルドルフがいなければ、かわいいミハエルも存在しえなかった。だからその思いを完全に消さなくてもいいのではないか。そんな風に罪悪感を時とともに昇華できつつあった。

だからこの頃には2人とも本心では本当の夫婦になりたいと思っていたが、お互いなかなか言葉に出せずにここまで来てしまったのだった。


「はぁー・・・」


「どうしましたか、若旦那様。まだゾフィー様とのこと、お悩みですか?」


「本当の夫婦になりたいよ。でもこんなの僕の欲望だ。それをゾフィーに言ったらきっといやらしいって嫌われるよね?」


「本当にそう思われますか?ゾフィー様も若旦那様を慕ってらっしゃるように見えますよ。きっと若旦那様からの言葉と行動を待ってらっしゃるんじゃないですか?」


「そうかなぁ。でもそうやって万一嫌われちゃったらどうする?」


「若旦那様、しっかりしてください!何年、若奥様のことを見ていらっしゃるんですか!若奥様のお気持ちはわかるでしょう?」


「コンスタンティン、独り者のお前には夫婦の機微ってものがわからないんだよ!」

「言ってくださいますね。公爵家が私をこき使うから私は結婚できないのですよ。それでも私は若奥様の気持ちには気づきましたが?」


「女性をくどく時間がないほどこき使ってはいないだろう?その気になったらお前と一緒になりたい女性はいくらでもいると思うけどな。お前に釣り合う女性を探そうか?」


「冗談ですよ。結婚する気はないので、見合いは勘弁してください」


執事コンスタンティンに発破をかけられてようやくラルフは決意した。


「ゾフィー、ちょ、ちょっといいかな?」


「はい、何でしょう?」


「その、あの、僕はゾフィーが望むまで・・・その、だ、抱かないって約束したよね?」


「ええ、覚えています・・・」


「ぼ、ぼ、僕は君を愛しているから、いつでも・・・だ、だ、だ・・・抱きたいっ!」


「まぁ・・・ラルフったら・・・」


ゾフィーは顔を真っ赤にして両手で覆った。ラルフはしまった、ガツガツしすぎたと後悔して青くなって口を手で押さえた。


「あ、あ、ち、違うんだ!」


「え?違うって?!」


明らかにゾフィーは戸惑って失望していた。それを見てラルフはますますあせってしまった。


「ち、違うって言うのも違うんだ!いや、違うって言うか、その・・・」


「ラルフ、落ち着いてください」


「ご、ごめん・・・その、僕が言いたかったのは・・・君が望まないならもちろんこのまま白い結婚を続けてもいい・・・」


「え?」


それを聞いてゾフィーはさっきよりもっと失望した。でもその気持ちが顔に出たと気づいた途端、恥ずかしくなって赤くなった。その様子を見たラルフは誤解した。


「ごめん、こんなこと言っちゃいけなかったね・・・」


しゅんとして去って行くラルフの後ろ姿を見るゾフィーは、落胆の色を隠せなかった。


情けなく敵前逃亡したラルフはまたコンスタンティンに愚痴っていた。


「若旦那様、ぐちぐち言ってないで、本音からズバリと始めてはどうなんですか?口下手なのにいちいち前提から説明しようとしていつも自爆してますよね」


何度目かわからないコンスタンティンの発破を受けてその日の夜、夫婦の寝室でラルフはもう一度アタックすることにした。


「ゾフィー、愛してるよ!」


------


ラルフはゾフィーをいきなりぎゅっと抱きしめ、口づけた。ラルフはゾフィーの唇の間に舌を入れようとしたが、ゾフィーは口を割らなかった。ラルフは夜着の上からもわかる豊満な胸に手を伸ばしてそっと触ったが、ゾフィーの身体がこわばったままなのに気付いて胸から手を離し、ゾフィーの口から唇を遠ざけた。


「ごめんね。強引だったよね」


「いいえ、そんなことないです・・・」


ゾフィーの身体がこわばったままだったのは、しばらくぶりの乳房への愛撫に恥ずかしくなって緊張してしまったからだった。本当はうれしかったのに態度に出せなかっただけなのだ。


「本当に?結婚する時に君が白い結婚を望むならそうするって約束したのにキスしてそれ以上のことをしようとした僕のほうが悪かった」


「そんなことないんです!だってわ、私は・・・ラルフのことが、す、す・・・」


「す・・・?」


「す、好き・・・なんです!」


「本当に?!ゾフィー!ぼ、僕も・・・あ、愛・・・してる!!」


ゾフィーの愛の言葉を聞いた途端、ラルフはゾフィーに抱きついて強く抱きしめた。


「ラルフ、痛い!」


「あ、ごめん!すごくうれしくって。本当にありがとう!これからゆっくり関係を進めていってもいいかな?」


「は、はい」


ラルフは自分の唇をゾフィーの唇とそっと重ねた。


「今日はこれだけにしておくよ。急ぎ過ぎて君を傷つけたくない。でも今度の7回目の結婚記念日には本当の夫婦になりたい。いいかな?」


「はい」


肉体的には欲求不満が残っても、ラルフはゾフィーとようやく愛情を確認し合えて、嬉しい心のほうが勝った。それに後1ヶ月で本当の夫婦になれるのだ、7年も待ったのに1ヶ月を急ぐ必要はない。その1ヶ月間、ラルフとゾフィーは、キスや身体の愛撫で徐々にスキンシップでも愛を確かめていった。


ラルフはそれでも結婚記念日当日まで不安だった。がちゃっと夫婦の寝室のドアが開いて緊張した面持ちのゾフィーが入ってきた時、ラルフは飛び上がるほどどきっとした。


「ゾフィー、本当にいいの?」


「ええ、貴方と本当の夫婦になりたい」


「本当に?」


「ええ」


「じゃあ、覚悟して。今夜は寝かせないよ。止めろって言っても7年待ったんだ、もう止められないからね」


ラルフはゾフィーの額、頬、唇を啄むようにちゅっ、ちゅっとキスを落としていった。そしてどんどん夢中になって唇と舌を互いに貪り合い、快感と多幸感が2人の胸に込み上げてきた。2人ともこんなに深いキスをしたことがなかった。


ゾフィーが男性を受け入れるのは久しぶりだから、ラルフはじっくりと時間をかけて彼女が十分に濡れて解れるまで愛撫した。


そしてとうとうラルフはゾフィーの中に初めて受け入れられて感極まった。2人とも涙ぐみながら、しばらくそのまま動かずに抱き合っていた。


「ああ、ゾフィー、ありがとう。すごく幸せだ。ゾフィーは?」


「私もラルフと本当の夫婦になれて幸せです」


ラルフはゾフィーと初めてだったから、動き始めるとすぐに達してしまった。


「ごめんね。せっかくいいところだったのに。7年待ったからもう我慢できなかった。でもまだできるよ」


その後、2人は7年間の空白を埋めるかのように朝まで何度も愛し合った。

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