世界
「ウホッホホホ」
ゴリ将軍は笑っていた。あまりに的確に予言が当たっていたからだ。
巨大な全裸の女が現れ、その体には蛇が纏わりついている。女はアビ教官であった。
まさに阿鼻叫喚というべき事態である。皇帝居城は瞬く間に破壊され、その破壊は帝都全土へと及んでいった。
どういう意図であろうと、止めなくてはならない。それが、御子の大義に水を差した自分のけじめなのだ。
総統に操られたことを罪と思うなと御子は言った。自分もまた人心を操り、目的を達そうとしたと。
だとしても、意のままに操られ、友を殺し、幼子に手を掛けようとしたという記憶が消えることはない。
必要なのだ。
ゴリ将軍は自らの頭を掴むと、手首を捻って首の骨を折った。ゴキリという音ともにゴリ将軍は死ぬ。
そして、再び生を受けた。膨張する肉体と引き換えに。
ゴリ将軍は巨大化していた。その巨体のままに、巨大化アビ教官を殴りつける。だが、その翼で空を飛び、ひらりとかわされてしまった。
空中戦は分が悪い。ならば、自らの土俵に引きずり込むべきだ。土俵は比喩ではなかった。足首を掴むと地面に叩きつけ、体勢を立ち直したところでがっぷりと四つを組んだ。
彼女の体内から生み出された無数の蛇に全身を噛み付かれる。その痛みと猛毒に耐え、関節技を仕掛けた。
そして、待つ。ヒーローたちが現れるのを。
「ゴリ将軍、なぜ……。
だが、感傷に浸る時間はない。この世界の総統は俺なんだ。たとえ巨大な相手だろうと喰らいつくまで!」
拓磨は強化アームの
「よく言った! 俺も力を貸す」
地面から声が聞こえた。先ほどまで倒れていたカオスレッドは幸輔の姿のままが立ち上がる。その力強い声が頼もしく響いていた。
そして、腕のリングを起動させる。
「俺こそが運命に選ばれた最強の戦士、カオスレッド!」
その言葉とともに彼の全身が燃え上がる。カオスレッドのスーツとヘルメットが装着されていた。
――同様だ。拓磨の意思を学習した。
お前の体内で力を取り戻すことができた。それに迎えも来てくれたようだ。
拓磨の目の前でプラズマが固体へと変化し、人の姿を形成していた。大気圏外からブルーの新たな肉体が飛来したのだ。拓磨の体内からブルーが抜け出す。
「
その肉体と融合し、新たなブルーとなる。そして、巨大化アビ教官に向けて飛び立っていった。
「ふっ、わしもじゃ。
そう発言したのはブラックだ。カオスバイオレンスの攻撃により変身が解けていたが、気力を振り絞り、再び黒い鎧を見に纏う。
「時渡りの剣士、
ブラックは時空を切り裂き、時を止めて固定した空気を蹴り上げて、巨大化アビ教官へと走っていった。
「私もいるよ! まだまだ元気! 話聞いちゃったけど、私も拓磨くん、応援したい。だから、戦うね!」
バイクに乗り、イエローイレギュラーの
「カオスイレギュラーズ唯一のレギュラー戦士、イエローイレギュラー須賀瑞穂! じゃあ、行くよ!」
光に包まれて、イエロイレギュラーの姿へと変身する。
須賀瑞穂はいつでも全力だ。その全力で巨大化アビ教官を撃ち倒しに進んでいく。脚部のジェット噴射を解放し、飛び上がった。
「ふん、気に入らねぇな! どいつもこいつも好き勝手暴れやがってよ! 正義を一つだと決めつけて
転移しながら現れたのはグレーだ。ニンギョウ参謀長との戦いで傷つき倒れたはずであった。
「グレー、あんた、致命傷じゃなかったっけ?」
イエロイレギュラーがグレーに並んで飛行する。並びながらも、グレーに対して疑問を口にした。
「俺は
さらりととんでもないことを言う。これにはイエローイレギュラーも呆気に取られた。
「げっ。怪物じゃん」
グレーは一枚のカードを取り出すと握り潰す。全身が光を放った。
「次元盗賊、グレー。俺は俺の正義のために戦う」
グレーの全身が灰色のスーツに包まれていく。頭にはターバンを模したヘルメットが装着された。
カオスレッドは拓磨を抱えていた。そのまま飛ぶつもりだ。
「いいか、一気に行くぞ」
カオスレッドの言葉に拓磨は頷く。気流が吹き荒れる。それに乗り、拓磨とカオスレッドは飛び上がった。
「もはや、これまでか」
一方、ゴリ将軍はアビ教官と組み合っていたが、彼女に絡みついていた巨大な蛇がゴリ将軍に噛みついた。ついには肩から腹部までに喰らいつき、ゴリ将軍の全身を喰い破る。
これには堪らない。組み付く力を失うと、アビ教官は飛び上がり、ゴリ将軍を振り落とした。
「ぐぬぅ」
地面に伏したゴリ将軍はアビ教官の姿を眺めた。蛇に纏わりつかれながらも空を飛ぶ姿は堕天使のようだ。
そこに、四方向から攻撃が入る。
ブルーは光線を撃ち、ブレスレットを変化させた剣で、アビ教官を斬りつける。
イエローイレギュラーは機関銃で牽制しつつ、近寄ってはブレードでアビ教官を刻み、ついで追尾ミサイルを発射した。
ブラックは固定した空気と時間の流れの中を自在に跳躍し、幾度となく剣撃を浴びせかける。
グレーは転移で隙を突きながらも、斬撃と砲撃を繰り返し、的確にアビ教官の臓器だけを傷つけていた。
そして、藁兵+
「
「
両者の出した炎熱がアビ教官とカオスバイオレンスを燃やし、溶かし、焦がしていく。
その炎はリングを形作っていた。
「まさに! この
リングを中心にして現れる四つの天使たち。ゴリ将軍は予言の成就を目の当たりにしていた。世界の暗示は完成、一致、大団円。
アビ教官とカオスバイオレンスを倒したことで、
「我が生涯はいまだ五里霧中。されど、
ゴリ将軍は満足しながら逝った。未来は拓磨が引き受け、彼と切磋琢磨した
一つの物語が完結した。
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