もう一つの地球の存亡
「カオスバイオレット、あなた、どういうつもりなの!? あなたは
御子のマイが金切声を上げる。それに対し、カオスバイオレンスは不気味な笑い声で返した。
――キヒヒヒヒヒヒヒ
「まだ、そんな風に考えていたんだ。バカだなぁ。
逆だよ、逆。異海の門が開いた時、確かに
カオスバイオレンスはその姿を変えていく。まるで大蛇のような姿だ。
その姿のまま、アビ教官に纏わりつき、二人の肉体が融合を始める。
「悲しみだと!? お前も
拓磨が吠えた。カオスレッドと戦う前の言葉が思い浮かぶ。総統が死ねば、
「そんな、
御子のアイが疑問を投げかけた。カオスバイオレンスは戸惑ったような素振りを見せる。
「質問が多いねえ。どれから答えようかなあ。
僕は理想の体現者だよ。可能性を引き裂かれ、悲痛にくれる地球の意志、地球の嘆きが形となり、理想を叶えるために具現化したんだ。因果なものだけど、君たちが召喚したからこそこの姿を持つことができたともいえる。
それと
カオスバイオレンスは理想の体現者だったのだ。だからこそ、人々の理想であるプロレス技で戦いを繰り広げていたのだろう。
彼の言葉にブルーが反応した。拓磨の体内から声が聞こえる。
――その地球意志とやら、私を地球に呼んだ声と同一の存在だろう。カオスバイオレンスのような肉体に縛られたものではなかったがな。
拓磨の中で何かがつながっていく気がした。
「ということは、カオスレッドの運命や因果律をつなげるような力も、その地球意志とやらが関連しているのか?」
その言葉を聞き、カオスバイオレンスが笑う。
「それも逆だな。あの男は起点だ。あの男がいたから、地球を一つにする行動を取ることができたのだ。そういう起点となる存在はいつの時代にもいるものだがな。
ただ、少し当たっている。その起点を軸にして、時間の流れを呼び寄せ、
これで地球は一つになる。そう思ったのだが、思いの外、手間取ってしまったようだ」
紫色の戦士の語る物語を聞き、ブラックが疑問を呈する。
「なるほどのぉ。だけどの、わしはもうそれに関心はないぞ。分かたれた可能性のまま、それぞれの可能性を探せばいいんじゃないか。無理に一つにする必要もあるまい」
ブラックの言葉にカオスバイオレンスの笑みが途絶える。それに追い打ちをかけるように、御子のモコが言葉を続ける。
「アハハー、その通りです。私たちはもう
その発言でカオスバイオレンスの怒りが頂点に達した。
アビ教官とカオスバイオレンスの融合が加速していく。
「愚かだ。なんて愚かなんだ、人間てやつは。引き裂かれた魂が元に戻れるのだぞ。消えるわけじゃない。一つに戻るんだ。それぞれの可能性を取り戻せるんだよ!
なぜ、それを拒否する? 自分の自我を守りたいのか? そんなものは仮初のものに過ぎない。脳の生み出した錯覚に過ぎない。そんなものを守るというのか? 愚かだよ!」
「そうです、愚かなのですよ、この者たちは。こんな世界いらない、全部壊してしまいましょう。私とあなたの手で」
アビ教官はカオスバイオレンスに共感していた。二人の憎悪が膨れ上がり、同時にその体も膨れ上がる。
ブラックがそこへ切り込んだ。だが、予想外に膨れ上がるスピードが速く、膨張によって弾かれてしまう。
「あはっ、こんなのは遠くから狙っちゃえばいいんじゃない」
御子たちがその肉体を一つにし、カオスシャインへと変身する。そして、全身から銃身を剥き出しにして、滅多矢鱈に撃ちまくった。
「邪魔だよ」
大蛇の口からエネルギー波が放たれる。カオスシャインに直撃だ。
「紀元前338年8月2日。フィリッポス二世はファランクスを率い、アテナイとテーバイの連合軍を打ち破った。その守りの力を我が手に」
トケイ技官長が大楯を手に、エネルギー派の前に立つ。無力化はできない。それでもダメージは軽減され、トケイ技官長もカオスシャインもどうにか生き残った。
しかし、アビ教官とカオスバイオレンスの融合体は巨大に膨れ上がり、山のような大きさとなっている。
拓磨たちにもカオスイレギュラーズにももはや巨大戦力は残っていない。この巨大化アビ教官を止めることはできない。
ドスン
そんな時だ。巨大化アビ教官を止めるものがあった。
「ここは俺が止める。安心しろ。実は俺こそが最強の
それは巨大化したゴリ将軍だ。巨大化アビ教官に対し、がっぷり四つに組み、その動きを止めている。
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