藁兵∞

 藁兵+無限開放ストローマンインフィニティへと変貌を遂げた彗佐せっさ拓磨たくまは、全身が輝き始める。

 情熱的に燃える赤色、光り輝く黄色、鮮やかな緑色、透明な光を放つ橙色、澄み切った青色、怪しげに輝く紫色。それは七色の光というべきだった。七色は無限を示す色合い、拓磨の力もまた無限のものとなった証明である。


 補助装置アタッチメント皇帝錫杖エンペラーアンクに換装する。拓磨の腕にアンクが出現した。そのアンクを掲げ、カオスレッドに命令を言い放とうとする。


「カァァァァァァァァァアァッ!」


 大声を上げたカオスレッドにより、拓磨の命令を打ち消された。耳に入らなければ、力ある言葉であろうと意味はない。それは拓磨自身が総統を倒したことから、実感していることでもある。

 その隙を突き、カオスレッドは拓磨への間合いを詰め、その腹に拳を叩き込む。


「げほっげほっげほっ」


 むせ返る。とても声を出せるような状態ではなかった。

 ならば、補助装置アタッチメントを切り替え、神経毒噴霧ブフォトキシンをセットする。ヒキガエル師団長の使っていた必殺技だ。

 カオスレッドは間合いの内側にいる。神経毒噴霧ブフォトキシンをもろに喰らった。これでしばらく動きを止めるはず。


 全身を麻痺したカオスレッドに、レプリカブレードで一撃を放つ。だが、カオスレッドは硬直した状態のまま、気流を操り、距離を取った。拓磨の攻撃は空を切る。

 強化アームを狙撃モードに切り替えた。そして、狙撃銃で悪夢爆弾ナイトメアを打ち込む。マレーバク師団長の能力を詰め込んだ弾丸であった。

 着地を狙ったその狙撃はピンポイントで命中する。カオスレッドは悪夢にうなされた。


 これはチャンスだ。蔦蛇ワイヤーバイパーでカオスレッドの肩を掴み、一気に近づく。強化アームは鋼鉄斧アイアンアクス。ニンギョウ参謀長の使っていた武器である。


「斧マニアも納得の一撃を喰らえ!」


 カオスレッドの首筋を狙い、拓磨は斧を振り落とした。

 だが、カオスレッドはその一撃を回避するように、拓磨の間合いの内側に入り込んだ。そして、掌底を当て、拓磨を吹き飛ばす。

 眠っているはずだ。悪夢に苛まれているはずだ。だというのに、攻撃してくる。以前にも同じことがあった。


「くっ、お前も夢遊病か」


 それなら、中距離で仕留めるまで。拓磨は強化アームを念力砲サイコキネシスキャノンに切り替え、サイコパワーを充填する。時間はかかるが、今は問題ない。

 そして、サイコパワーを解放し、カオスレッドに撃ち込んだ。だが、カオスレッドは跳び上がり、その攻撃を避ける。


「今、目が覚めたところだ」


 カオスレッドのリングブレードがリング状に変化し、そのまま突撃してくる。人間の死角を突いた軌道であった。だが、拓磨の片眼は魚眼だ。その攻撃を見切った。

 拓磨は強化アームを十手に変換し、リングブレードを受け止める。江戸っ子気質なジッテ師団長の力を使ったのだ。そして、梃子の原理を利用した力でリングブレードを奪い、放り投げる。


 ステゴロになったカオスレッドは意にも介さずに、間合いを詰め、正拳を拓磨に向かって振るう。クリーンヒット。その一撃は拓磨に叩き込まれた。しかし、感触はない。

 写真幻影フォトミラージュを発動しており、全身が幻影になっていたのだ。これはシャシン親衛隊長の技である。

 再び補助装置アタッチメント変換。隙を突いて、カオスレッドの顔面に掘削甲ドリルガントレットを打ち付ける。カオスレッドの仮面が割れ、素顔が露わになるが、次の瞬間にはカオスレッドは間合いを広げていた。


「ハッハッハッハッハ、楽しいなあ、藁兵+無限開放ストローマンインフィニティ!」


 カオスレッドは笑っていた。笑いながらも、拓磨を殴りつける。


「ああ、楽しい。カオスレッドよ、俺はこの時をずっと待っていたんだ」


 拓磨もまた笑い、カオスレッドを殴り返す。


 そんな攻防が無限の時間のように続いた。

 カオスレッドの攻撃が拓磨を吹き飛ばす。気力で立ち上がった拓磨がカオスレッドに一撃を入れる。そんな攻防が飽きることなく繰り返された。

 そして、決着の時が訪れる。


「お前の勝ちだ」


 振り絞るように呟き、カオスレッドは倒れた。勝利者は拓磨だった。もう一つの地球アナザーアースの未来は守られたのだ。

 そして、それは本来の地球オリジナルアースの可能性は奪われたままだということである。

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