カオスキラーの仮面
――キンキンキンキンキン
皇帝居城の本丸というべき宮殿に近づいた時、剣の打ち合う音が聞こえてきた。拓磨は
カオスキラーとブラックが戦っていた。時を渡る剣士と次元を自在に転移する戦士。まさしく異次元の戦いが繰り広げられている。カオスキラーが次元を超越して、ブラックの周囲に何重ものカオスキラーを出現させた。それに対し、ブラックは時間を遅くし、そのすべての剣を弾き、一太刀浴びせる。
どちらが勝ってもおかしくない、まさしく拮抗した戦いであった。
だが、拓磨が、カオスファイヤーが参戦すれば、その状況も変わる。そう思い、
「ほう、おぬしであったか。そういえば勝負を預けておったの。これは良い機会じゃ。心行くまで仕合おうぞ」
ブラックが何かに気づいたかのように、笑いだした。それに対し、カオスキラーは黙ったままである。
何を話しているのかはわからない。しかし、今こそ勝負だ。
「変身!」
炎を纏い、その焦熱と引き換えに力を引き出す。そして、レプリカブレードをリング状に変化させ、ブラックに投げつけた。
ガギン
ブラックの周囲の時間が歪む。カオスキラーの打突を回避しつつも、チャクラムと化したリングブレードを叩き落す。
「助太刀か。この場に割り入るとは野暮天じゃの」
拓磨は気づく。現れたのは自分だけではない。
ドドドドドドド
ドラミングの音が響いた。藁兵の軍勢を率いるのはゴリ将軍だ。ドラミングの音ともに、ゴリ将軍の雄叫びが響く。
「貴様ら、
ゴリ将軍の鬨の声が飛ぶ。藁兵たちは一気に勢いづく。もはや藁兵たちはどんな相手であれ、ただ倒される存在にはならない。
そして、一気呵成はカセイ参謀長の真名でもある。この戦いはカセイ参謀長への手向けの意味も込めているのだろう。
「残念だ、拓磨くん。君は見所のある軍人だと思ったのだがな」
ゴリ将軍の言葉に、拓磨には返せる言葉はない。ただ、剣で答えを出すしかない。
藁兵たちが押し寄せてくる。
拓磨はレプリカブレードを回収し、鞭状にしならせて、藁兵の群れを打ち付ける。だが、カオスファイヤーの力を持ってしても、一撃で倒すことはできなかった。藁兵は止まらない。
「ぐっ」
戦いづらさを感じつつ、迫る藁兵の頭蓋を正拳で砕き、直剣にしたレプリカブレードでもう一人の藁兵を斬り捨てる。だが、藁兵は二人だけではない。別の藁兵の槍が届き、拓磨に切りつける。それはどうにか回避するが、背後を鈍器で叩かれた。ガツンと来る痛みが走る。
まともに戦っては藁兵の群れに潰されてしまう。拓磨は跳び上がると、レプリカブレードに熱を込めた。そして、一気に開放する。熱は炎となり、藁兵たちを焼き尽くす。
――ぜぇぜぇ……
肩で息をしていた。どうにか、周囲の藁兵はいなくなったが、無限に存在するかのように新たな藁兵が現れる。ゴリ将軍の兵士を鼓舞する能力も強化されているようだ。異様なほどに藁兵が強くなっている。
カオスキラーもブラックも、それぞれ順調に藁兵を倒しているように見えるが、それでも疲労は隠しきれない。彼らが倒されるのも時間の問題だろう。
「ならば、この手を使うしかないかのぉ」
ブラックが何事かを呟く。そして、時間の流れを緩やかにし、藁兵の隙間を縫って、カオスキラーに近づいた。瞬時に刀を抜き、カオスキラーを斬る。
カランカラン
斬られたのはカオスキラーの仮面だった。その素顔がさらされる。
赤毛を逆立たせ、耳には火星のピアスが揺れていた。顔には火星の地表を模したタトゥーが施されている。
カセイ参謀長そのものだ。
拓磨も驚いたが、ゴリ将軍も目を見開いて彼を見つめていた。当然だろう。死んだと思っていた旧友に敵として対峙しているのである。
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