カオスレンジャー

 戦隊と戦隊。両者の戦いが始まった。


 カオスイレギュラーズを打ち倒すものカオスキラーがグレーに攻撃を仕掛ける。幅広のブロードソードを水平に構え、突き刺すような動きでグレーに迫った。


「けっ、馬鹿かよ。その特殊服スーツわざわざ複製したのか。新しく開発することもできないほど技術力が衰退してんのかぁ?」


 グレーは煽るような口調でカオスキラーを挑発しつつ、十分に引き付けると、転移してカオスキラーの背後を取る。

 だが、カオスキラーはそれを見切っており、自身も転移し、逆にグレーの背後を取った。ブロードソードの一撃がグレーの脳天を突く。だが、ヘルメットの装甲は分厚く、貫くには至らない。


「愚かなのはお前の方だ。貴様ら、カオスイレギュラーズの五人は運命と呼ぶべきエネルギーに加護されている。我らが取り込みたかったのはその運命力なのだ。それさえ拮抗できれば、私は負けることはない」


 そう言いながらも、カオスキラーは剣技においても、転移の用い方においても、グレーを圧倒した。さすがは一人で十分だと言い切るだけの実力者である。

 だが、グレーもやられっ放しではない。身体を液状に変化する能力によってカオスキラーの技を受け流し、雨を固定化させる能力を用いてカオスキラーの動きを制限する。勝負の行方は見えない。


「オ前ノ相手ハ私ダ――」


 機械音声を響かせ、影の戦士カオスシャドーがブラックの前に立った。そして、剣を構える。上段の構え。攻撃的な構えであり、拓磨が得意とする構えでもあった。

 それに対し、ブラックは正眼に構える。どんな状況にも対応する万能の構えだ。


「面白い。おぬしの技、確かめてみたい」


 ブラックの静逸な呼吸が時間の流れを遅くする。それはカオスシャドーも同じことであり、両者とも時の歪みの中にいた。

 こうなると、ともに時間の流れから外れており、能力面においては互角。純粋な技の冴えだけが勝負を決する。


「テェイッ!」


 気合とともにカオスシャドーが跳躍する。それは四次元的な跳躍であった。縦、横、上下、さらに時間の流れ。そのすべてを無尽に跳躍し、ブラックの隙を誘い、そして一気に間合いを詰める。

 無情。その渾身の一撃はブラックに見切られ、回避される。それと同時にブラックの袈裟斬りがカオスシャドーを斬り裂いた。鎧に深く食い込み、その肉体を斬り込む。だが、血は流れない。されど、カオスシャドーは倒れた。


「ほほう、おぬしも聖徳太子流か。拓磨殿と同じじゃの。珍しい」


 八艘跳びが如き跳躍、一気に間合いを詰める技。それは確かに聖徳太子流のものだ。

 まさか、自分自身をコピーした機械兵士なのでは。拓磨は彼らの戦いを横目で眺めつつ、そんな考えが脳裏をよぎった。


「マダマダ。寝テハイラレンノダ」


 機械音声を鳴らせながら、カオスシャドーが立ち上がる。この戦局は明らかにカオスシャドーの不利が見て取れた。


「あはっ、同じ色同士、仲良くしませんかぁ」


 光の戦士カオスシャインは狙撃銃をイエローイレギュラーに向ける。

 それに対し、明らかに不機嫌そうなイエローイレギュラーの声が返ってきた。


「不愉快。私たちが勝ち取った力、簡単に真似されたくないんだけど」


 そう言うと、イエローイレギュラーの脚部が開き、ジェット噴射で飛び上がる。そして、複雑な軌道を描きつつ、カオスシャインに突撃した。

 急展開にカオスシャインは慌てる。


「ちょ、ちょっと、まだ慣れてないんだから、待って! え、えと、こういう時はAIでターゲットをロックして、ホーミング! これでいけない!?」


 カオスシャインの肘から砲塔が出現し、ミサイルが射出され、イエローイレギュラーを追尾した。イエローイレギュラーはミサイルから逃げつつ、距離を取って撃ち落とす。

 なんだかんだ、カオスシャインの装備は高性能だ。変身者の戦いの練度は低いようだが、AIのサポートにより戦いになっている。後手後手の対応ながらも、イエローイレギュラーを寄せ付けていない。


「ということは、私の相手はあなたね」


 上空に佇み、ほかの仲間のフォローをしようと様子を窺っていたブルーに対し、アビ教官こと深淵の戦士カオスアビスが立ちはだかった。


「力を確かめさせてもらう」


 そう言うと瞬時にテレポートしてブルーの背後に回ると、腕を交差して光線を放つ。だが、ブルーはそれを読んでいた。片手から光の弾を発射し、光線を破裂させる。


「私たちの力を学習し複製したのか。

 だが、不思議だな。君とは相容れる気がまるでしない」


 それを聞いて、カオスアビスはフフッと笑う。


「それでいいのよ。敵同士なんだから」


 カオスアビスはブルーと同様にプラズマ生命体と化している。両者の戦いはどうなるか、予測もつかない。


「だったら、リーダーを潰せば、早いよな」


 そう宣言したのは炎の戦士カオスファイヤー拓磨だ。再び変身体となっていた。拓磨は気流に乗り、カオスレッドの元まで飛ぶ。そして、レプリカブレードを鞭状にして、カオスレッドに叩き込んだ。


「ほう、お前か」


 カオスレッドは直剣にしたリングブレードで鞭を巻き取り、拓磨ごと自分に引き寄せる。そして、拓磨の顔面が近づくと、思い切り正拳を叩きつけた。


「猿真似しかできんなら、もうやめてしまえ」


 その言葉には有無を言わせぬ迫力がある。拓磨には反論する気も反撃する気も起きなくなる。だが、このまま負けるわけにはいかない。


「うおおおぉぉぉぉぉっ!」


 気合と根性だけを胸にして、剣を振るう。カオスレッドと何合も打ち合う。

 熱い。焼ける。焦げる。燃える。全身をカオスファイヤーのスーツが燃え上がらせた。それでも、根性だけで打ち合い続ける。それはカオスレッドだって同じことだ。拓磨にはそれがよくわかっていた。


「てやんでぃ、てやんでぃ! おいらも助太刀するぜぃ!」


 新たな異海将校アウターマンが現れる。浮世絵からそのまま抜き出たような風貌のジッテ師団長だ。丁髷に着流しを着こなし、両手には十手が握られている。

 その十手の一撃がカオスレッドに撃ち込まれようとした。


 バコーン


 カオスレッドと拓磨の撃ち合いに巻き込まれる形で、ジッテ師団長は逝く。そして、その肉体を暴走させ巨大化した。


「カオスイレギュラーロボ、合体だ」


 打ち合い続けていた拓磨を吹き飛ばし、カオスレッドが宣言する。ほかのメンバーも戦いを離れて巨大戦力を呼び、カオスイレギュラーロボに合体した。


「それなら、こちらも合体よ」


 アビ教官ことカオスアビスの声が響く。

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