カオスファイヤー拓磨 VS カオスイレギュラーズ

 カオスイレギュラーズが基地の攻撃能力を破壊していた。戦闘機が軒並み叩き潰され、真っ二つに割られた戦車が列をなしている。

 藁兵ストローマンの死体が山のように積み重ねられ、中には異能士官アウターマンも散見された。これほどの戦力が僅かな時間で叩きのめされたのである。

 なんという脅威であろうか。拓磨が力をつける間にも、カオスイレギュラーズは成長し、生半なまなか異海将校アウターマンでは相手にならないほどに強くなっているのだ。


 実に怖ろしい。恐ろしい相手だ。

 だからこそ、この場で決着をつけなくてはならないのだ。


「変身!」


 炎の力を起動する。拓磨の全身が燃え上がり、灼熱が拓磨を襲った。焦熱と苦痛という代価と引き換えに、拓磨は力を得る。炎の戦士カオスファイヤーとしての姿に変身した。


「これ以上の狼藉は許さん!」


 カオスファイヤー拓磨は飛び上がった。ただのジャンプが凄まじいスピードと跳躍を齎す。その勢いのまま前方でほかの仲間たちの護衛を務めていたブラックに斬りかかった。


 ガギィン


 瞬時にブラックも身構え、斬撃を跳ね返そうとするも、拓磨の膂力によってそれさえもままならない。逆にブラックの刀が弾かれ、その隙に拓磨は掌底を叩き込んだ。ブラックが吹っ飛ぶ。

 強くなっている。力だけではない。技も磨かれている。今までの戦いと修行の日々は無駄ではなかった。強大なパワーを得たからだとはいえ、あのブラックを上回ったのだ。


 そして、もうひと跳躍。中空に浮かぶブルーの元まで瞬時に進んだ。


「せいやっ!」


 拓磨が現れるタイミングを見計らい、ブルーが蹴りを見舞う。だが、それは拓磨も織り込み済みだ。

 カオスファイヤーが排熱する熱を全身に纏わせていた。ブルーの蹴りをまともに喰らうも、ブルーもまた熱によって焼かれる。結果、拓磨以上にブルーがダメージを受ける結果となった。焼けただれた足からはプラズマがシュウシュウと漏れ出ている。

 その隙を見逃さず、拓磨はブルーを斬り捨てた。ブルーが地に落ちていく。


 そのまま、後方で銃撃を展開しているイエローイレギュラーを狙う。カオスファイヤーのスピードは凄まじく、瞬間移動のように彼女の元まで飛んでいった。

 だが、その行動は読まれていた。グレーが転移し、拓磨を後ろから殴りつける。思わず怯んだ隙に、イエローイレギュラーの銃弾が叩き込まれた。


 それでもカオスファイヤーの防御力であれば挽回が可能だ。

 拓磨は立ち上がると同時に、イエローイレギュラーにドロップキックを浴びせ、その反動のままに、グレーにレプリカブレードの直剣で突きを見舞う。直撃は避けたものの、ヘルメットを掠め、ひびが入った。


 ここで、上方から光線が浴びせられた。ブルーがすでに回復しており、腕から光線を放っていたのだ。


「ぐぬうっ」


 拓磨が呻いた。ダメージもさることながら状況が悪い。イエローイレギュラーもグレーも戦闘不能にはなっておらず、ブルーが攻撃してきている。三対一だ。どう考えても分が悪い。

 さらに、殺気を感じる。ブラックが構えていた。


――まずい、時が止まる。


 そう思った瞬間、拓磨は斬られていた。腹が一刀両断され、上半身と下半身に真っ二つになる。

 その時、カオスファイヤーの炎が燃え上がった。強烈な焼ける感覚とともに、真っ二つになった体が互いに燃やし合うように一つになる。焼きゴテを当てられたような苦痛とともに、身体が再生していた。


――この身体は簡単に死なせてくれん。だが、これからどうする。


 四対一の状況は変わっていない。力押しでどうにかなるような相手は一人もいない。

 力を得たとはいえ、一人でできることなど限られている。拓磨は敗北を覚悟した。その瞬間、拓磨は燃えるような苦痛に耐えられなくなった。変身が溶ける。

 藁兵+5ストローマンプラスごの姿に戻っていた。絶対絶滅。この状況はまずい。


「あはっ、拓磨さん、どうして一人で突っ込んじゃうんですかぁ」


 能天気な声が聞こえた。聞き覚えがある。光の戦士カオスシャインだ。

 黄金の戦士が拓磨の背を守るように立っていた。


「オ前ガリーダーナンダ。仲間ヲ頼ルコトヲ覚エロ」


 機械音声が聞こえ、影の戦士カオスシャドーがブラックの剣気を遮る。


「リーダーとしてはなってないようだ。やれやれ、俺が育てなきゃならんのか。一兵卒としてなら嫌いな行動ではないがな」


 カオスイレギュラーズを打ち倒すものカオスキラーが距離を取りつつ、カオスイレギュラーズの四人に牽制をかけていた。

 彼の動きにより、カオスイレギュラーズの行動が制限されている。


「時には待つことも大切なのよ。今回で少しは学んでくれればいいんだけど」


 アビ教官こと深淵の戦士カオスアビスが頭上で全体の戦局を睨んでいた。

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