新たな変身

 彗佐せっさ拓磨たくまはとぼとぼと歩いていた。

 一大決戦に敗北し、おめおめと生き延びる。拓磨の目的は本来の地球オリジナルアースの征服ではなく、もう一つの地球アナザーアースの世界帝国の打倒だ。ならば、勝ち負けに一喜一憂する必要はない。考えるべきは自身の立身だけだろう。


 だというのに、敗北を引きずってしまう。

 それは、目標にしていたカオスレッドに全く届いていないという焦燥と絶望が大きい。

 また、作戦で知り合った異海将校アウターマンたちは誰もが気持ちのいい尊敬できる軍人であった。そんな人たちの死を間近に見て、気を沈めないほうがどうかしている。


 そんな拓磨を明るく迎えるものがあった。アビ教官である。


「ふふっ、拓磨、やっと帰ってきたのね」


 マゼンタのロングボブに、紺のラバースーツ。筋骨隆々の見事な肉体美がその服装から見て取れる。いつものスタイルであったが、違和感もあった。

 奇妙なことに、雰囲気が明るいのである。


「ついに完成したのよ。拓磨、あなたももう藁兵ストローマンなんて立場じゃなくなるの」


 聞き違いだろうか。自分が藁兵じゃなくなるだなんて。

 どうやっても、異能士官アウターマンに覚醒できない自分に、ほかの道があるとでもいうのか。


「腑に落ちないのね。それでもいい。でも、試してみなさい」


 アビ教官はそう言うと、ブレスレットのようなものを拓磨に渡した。


「あなたが回収したカオスイレギュラーズの破片を元に再現したのよ。そのブレスレットにはカオスレッドの異能と能力が封じ込められている」


 そう言いながらも、口元が歪んでいた。笑みを隠しきれていない。


「装着しなさい。そして、変身しなさい。

 あなたは今日から藁兵じゃない。炎の戦士カオスファイヤーよ」

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