巨大化ペンチ VS カオスイレギュラーロボ改 VS ボーリョクダイオー

「ああ、もう! 地震で戦線離脱なんて最悪!」


 ぼやきながら瓦礫から這い出てきたのはイエローイレギュラーである。さらに、同じようにブラックも這い出てきた。


「なに、これほどの揺れであれば致し方なし。むしろ、生きていることを喜ぶべきじゃ」


 そして、二人は巨大化したペンチ師団長に気づく。それ以外の敵もない。ならば、やることは一つだ。


時の黒牛ブルクロノスよ、来い」


 ブラックの呼びかけにより、巨大な雄牛が出現し、ブラックはその頭に飛び乗る。同様に黄色の戦闘機イエローイーグルが出現し、バイクに乗り込んだイエローイレギュラーが宙を舞い、ドッキングした。

 さらに、ブルーが巨大化して翼の生えた巨人になる。


「ちっ、深追いはできねぇな。グレーライオン転移せよ」

 灰色のライオンの姿をした次元航行艦が姿を現した。ライオンの光る目に吸い寄せられ、グレーは艦の中に乗り込んだ。


 残るはカオスレッドであるが、いまだカオスバイオレンスとの技の掛け合いである。カオスバイオレットの脚を四字に締め上げていた。四の字固めである。


「どうやら、ここまでのようだ。勝負は預けよう」


 カオスレッドはリングから歯車上の歯車を出現させた。歯車が回転し、次第に人型の形状を取る。そして、四人のメカと一体になり、巨大ロボに合体した。

 さらに新たな武装が追加される。両肩に砲塔がそびえていた。地球防衛軍の最新兵器であるカスタムキャノンである。

 新形態への合体を遂げると、イエローイレギュラーが自信満々に宣言した。


「完成、カオスイレギュラーロボ改!」


 だが、現れた巨大ロボはカオスイレギュラーロボ改だけではない。

 カオスバイオレンスが禍々しいオーラを放ち、それが具現化し、巨大なロボットへと変化した。

 黒い機体に紫色の装甲が装着される。その姿は魔神と呼ぶべきものであったかもしれない。だが、ロボットにしては稼働領域が少なく、動く場所があまりないように思われた。


「完成、ボーリョクダイオー。真に強いロボは最小限の動きで敵を蹴散らす。君たちはこの暴力に耐えることができるかな」


 カオスバイオレンスが宣言する。


「カオスバイオレンス殿、あなたは我ら世界帝国の味方ということでよろしいのだな」


 巨大化ペンチはそう言いながらも、カオスイレギュラーロボ改に攻撃する。重厚なペンチの腕での一撃だ。重い打突を受け、カオスイレギュラーロボ改がよろめく。


「さあ、どうだかね。あ、このロボはとどめ以外のことはできないからよろしくね」


 カオスバイオレンスの言葉が不敵に響いた。

 そんなことは構わず、巨大化ペンチは追撃をかける。鋼鉄の腕に稲妻を纏い、その電撃をカオスイレギュラー改に浴びせた。


 ドドーンドーン


 カオスイレギュラーロボ改の砲塔が火を噴く。その砲撃が電撃を跳ね返し、巨大化ペンチはその二つの攻撃をまともに受けた。



「ぐわぁぁああああ!」


 ペンチ師団長の悲鳴が響く。

 僅かな交戦ながら、両者の攻撃は重い。すでに巨大化ペンチもカオスイレギュラーロボ改も満身創痍だった。


「じゃあ、とどめ」


 いつの間にか、ボーリョクダイオーの胸部に巨大なエネルギーが溜まっている。そのエネルギーを巨大化ペンチとカオスイレギュラーロボ改に向けて解き放った。

 両者とも、咄嗟に防御の体勢に移る。


「風よ、雨よ、我が祈りに応え、力を!」


 巨大化ペンチは風や雨を纏い、そのエネルギーを凌ごうとする。だが、無意味だった。自然界のパワーはボーリョクダイオーのエネルギーに抗うことはできない。エネルギーは風も雨も擦り抜け、直接、巨大ペンチを焼き切った。その圧力にその存在ごと掻き消される。


「ぐぬっ、ここまでとは……。カオスバイオレンスよ、真の天変地異とは貴様のことか。無念っ……! 世界帝国に栄光のあらんことをっ!」


 その断末魔の叫びだけが残っていた。


 ボーリョクダイオーのエネルギー波はカオスイレギュラーロボ改をも襲っている。

 キャノンの砲撃も擦り抜け、ブルーのエネルギーを宿したブレードも効果がない。だが、カオスレッドは自信満々に宣言した。


「ブルー、イエローイレギュラー、グレー、ブラック、お前たちならあのエネルギーを止められる。潜在能力を引き出せ!」


 その物言いに四人は困惑する。


「言葉の意味を理解できない。私に潜在能力など存在しない」

「はあ? そんなんでできたら苦労なんてないんだけど!」

「ふざけるなよっ! 転移して逃げりゃいいだろうが」

「いや、あれは逃げられる性質のものではないな。それなら!」


 左足のブラックが時空のうねりを生み出した。これに触れたエネルギーは時の彼方へ追いやられるはずである。


「仕方ねぇ! やるしかねぇか!」

「呼応する」


 時空の歪みに、グレーが次元転化の歪みを重ね合わせる。さらにブルーが宇宙エネルギーを加えた。


「え、えっと、私は何やればいいの? うーん、根性ぉぉっ!」


 イエロイレギュラーが肩のキャノンをめっぽうに撃ちまくった。その弾幕と歪みと歪みとエネルギーが一体になる。それは強烈なエネルギー体だ。

 ボーリョクダイオーのエネルギーとぶつかり合い、相殺される。


 残ったのはカオスイレギュラーロボ改とボーリョクダイオー。

 カオスバイオレンスはこの状況で笑いだした。


――キヒッヒヒヒヒヒ。


「このくらいはできるんだねぇ。申し分ない。これからが楽しみだ」


 そう言い残すと、ボーリョクダイオーもカオスバイオレンスも消えた。カオスイレギュラーズも解散していく。

 その地下にあって、生き残った拓磨は負傷したゴリ将軍を抱えつつ、掘削甲ドリルガントレットで地面を掘って、地上を目指していた。

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