ゴリ将軍の危機
ゴリ将軍の筋肉に刃物は通用しない。次元転移を多用するとはいえ、刃物を主体に戦うグレーは戦いやすい相手かと思えた。
とはいえ、グレーライオンの爪を転移させるような大技もある。それには注意が必要だ。
「もう、飽き飽きだ、あんたの戦い方はよ。とっとと終わらせる」
グレーのカットラスの一撃をゴリ将軍の剛腕が受ける。そのはち切れんばかりの筋肉は斬撃をものともしない……はずであった。
ズタッ……ズタズタッ
「ぐわぁぁぁぁあああ」
ゴリ将軍の悲痛な叫びが響く。血は出ていないはずだが、その腕が真っ青になっているのが遠目からでもわかった。これは内出血だろうか。
その様子を眺めていた
次元を超える能力、まさに極まれり。グレーもまた戦いの中で成長を続けている。最初から歯が立たない相手がいまだに成長を遂げるとは恐怖でしかない。しかし、だからこそ、今のうちに戦いを挑むべきだ。
「アビ教官、離してくれ。ゴリ将軍の窮地だ。助太刀に行く」
拓磨が訴える。だが、アビ教官の反応は冷たかった。
いまだ拓磨はアビ教官に肩を掴まれたまま、空中から戦場の様子を眺めているに過ぎない。彼女に解放されなくては、戦うこともできないでいる。
「自分の目的を忘れてない? あなたは何のために戦っているの?
ゴリ将軍のためなんかじゃなかったでしょ」
しかし、いつの間にか拓磨にはゴリ将軍に尊敬の念を抱いていた。これこそが誰もが夢中になるゴリ将軍の魅力というべきものかもしれない。
拓磨は肩の装甲をパージして、アビ教官の束縛から逃れた。同時に重力の支配下に入り、落下を始める。
その落下に身を任せたまま、
「ちょっと!」
アビ教官の叫び声が聞こえたが、もう拓磨の耳には入らない。本来、
「拓磨くん!」
ゴリ将軍の驚いた声が耳に心地よい。そのままの勢いで、
そして、その行先は――。
レプリカブレードを鞭状にしならせ、ゴリ将軍の背後を狙う。グレーの攻撃パターンならば、そこに転移するはずだ。
「読み切ったつもりか。甘いよ」
グレーが現れたのは拓磨の背後である。その瞬間にグレーのカットラスが拓磨の胸を貫いていた。
おびただしい流血。意識が遠のく。だが、ここで倒れるわけにはいかない。
拓磨は根性だけで立っていた。
「なんか、苛々するんだよ、お前!」
グレーは苛立ちとともに攻撃を仕掛ける。だが、感情により攻撃が雑になるなんてこともない。
次元の壁を超え、グレーの腕が出現する。それはゴリ将軍と拓磨、その両方に現れていた。両方とも右手であり、この瞬間、グレーの右手は二つがこの世界に存在した。
ゴリ将軍はもはや腕で受けきることもできず、胸部を貫かれる。
拓磨は
「くらえっ!」
一撃を凌いだ拓磨は
「二度も効かねぇよ」
しかし、グレーは爆発する前に爆弾を次元の彼方に転移させた。そのまま、グレーのジャマハダルによって拓磨は腹を貫かれ、血を吐いた。
絶体絶命、グレーのとどめの一撃が放たれようとする。グレーライオンの爪を転移させる大技だ。この攻撃でゴリ将軍も拓磨も死ぬのだろう。拓磨は覚悟を決めた。
だが、二人を庇うものが現れる。巨大化しつつある、死せるペンチ師団長だ。グレーの必殺技を受けるも、すでに死人のため死ぬことはない。斬られた箇所も斬られたそばから膨張していた。
ペンチ師団長は竜巻を起こすと、瓦礫の山に穴を作り出す。そして、その穴の中にゴリ将軍と拓磨を押し込んだ。
「二人とも、生き延びろよ。俺は……っ! 俺はァァアア!」
気が緩んだのか、ペンチ師団長の巨大化が早まりつつあった。肉が膨張し、その身体は高層ビルほどの大きさに膨れ上がる。
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