ペンチ師団長 VS ブルー

 カオスレッドとカオスバイオレットは相も変わらず、技の応酬を続けている。奴らの体力は無尽蔵なのだろうか。

 少し離れた場所では、ゴリ将軍とグレーが戦っている。それ以外の戦士の反応はない。イエローイレギュラーとブラックは瓦礫の下敷きになったままのようだ。

 カセイ参謀長の死は惜しいが、それでも、この戦果なら悪くないと思うべきなのだろう。


「私の相手はお前というわけだな、ブルー」


 ペンチに変態した頭の陰になり、隠れている眼光を頭上の敵に向ける。

 その視線の先にいるのは、銀色の肉体を持ち、青い紋様の刻まれた戦士、ブルーだ。


「イエローイレギュラーとブラックが心配だ。すぐに決着をつける」


 そう言うと、腕を交差させ、光線を放つ。しかし、そんな光線をまともに受けるはずがない。ペンチ師団長は素早く回避した。

 そこへブルーがテレポートして、蹴りを見舞う。ペンチ師団長は頭部にまともに一撃を受けてしまった。

 クラっとした意識の薄れる感覚があるも、どうにか意識を集中させる。そして、笑った。


「カチッチッチッチ。テレポートを使ったな」


 ペンチ師団長の反撃が始まる。連続で拳を振るい、ブルーを狙う。無論、ブルーに回避されるが、その拳が嵐を巻き起こした。

 プラズマは激しい気圧の変化に弱い。嵐がブルーの逃げ道を塞ぐ。

 その上、テレポートは使用したばかり。ペンチ師団長はカオスイレギュラーズの戦闘記録を何度も見返しており、ブルーのテレポートには冷却クール期間が必要だと気付いている。


「お返しだ!」


 ブルーの隙を見逃さず、ペンチ師団長がドロップキックを放った。


 シュワワワー


 ブルーの肉体が粒子状に変化する。ドロップキック自体は不発に終わったものの、それも計算通りであった。

 プラズマに変換されたブルーは気圧の壁を避けるように進む。そこに稲妻が走った。


 ピシャシャーン


「プラズマにはプラズマよ。雷はプラズマの塊。ブルーの身体を構成するプラズマは電撃のプラズマに押し流され、霧散する。そして、知性のないプラズマと混ざり合い、もはや復元は不可能。そうだろう」


 だが、稲妻を受けたのはブルーではなかった。雷が落ちた瞬間、ブルーは体内で鋼鉄の剣を生成し、それを頭上に放っていた。その剣が避雷針となり、ブルーには逃げる時間ができていたのだ。


「イエローイレギュラーが同じことをしていた。学習の成果が出た」


 ブルーが接近し、ペンチ師団長の頭部にチョップを打つ。二度目の頭部へのクリーンヒット。ペンチ師団長は足がすくむのを感じた。足に来ている。

 このままでは負ける。しかし、最強の師団長の称号を得た自分が負けることは許されない。

 ペンチ師団長は頭を回転させ、周囲を見渡し、勝ちへの道筋を探る。そして、それはあった。今はこのまま倒れればいい。


 ガーン


 ペンチ師団長が倒れた瞬間、カオスレッドが飛んでくる。カオスレッドの頭とブルーの頭が衝突し、両者が吹っ飛び、そして倒れた。

 カオスバイオレットがカオスレッドにジャイアントスイングを掛けており、このタイミングでぶん投げたのだ。それが上手い具合に嵌った。カオスバイオレットにペンチ師団長を助ける意図があったかは不明だが、結果的に助けられている。


 よろよろとブルーの元に向かった。止めを刺さなくては。

 カチカチと両手のペンチを鳴らす。このペンチでブルーの頭を砕くのだ。

 しかし、それまでだった。


 グサッ


 ペンチ師団長の背中に鈍い感触が伝わる。ブルーが避雷針として放った剣が落ちてきていた。その剣は正確にペンチ師団長の心臓を貫く。

 まさか、今さら偶然に降ってきたのだろうか。それはありえない。時間が経ちすぎている。

 この剣もまたブルーなのだ。ブルーの身体から生み出されたということはその意志を宿しているということだろう。タイミングを見計らい、ペンチ師団長に攻撃を仕掛けたということだ。


「不覚。だが、このままでは死なん」


 ペンチ師団長の肉体が膨れ上がり始める。巨大化が始まったのだ。肉体の急激な変化に全身が苦痛の悲鳴を上げる。

 だが、そんな中、あることに気づいた。


「肉体よ、膨らみ切るな。まだ、やることがある」


 驚異の精神力。ペンチ師団長の巨大化は緩やかなものとなった。

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