天変地異解放
ペンチ師団長の落雷による攻撃を、イエローイレギュラーは避雷針を射出することで回避する。それだけではない。竜巻や風雨に対しては、アンカーを打ち出し、身体を固定して堪えている。かといって、それを見越して、ペンチ師団長が直接殴りにいっても、銃弾の雨あられを喰らう羽目になるのだ。
なんという強力な相手だろうか。
皮肉なことに、
このまま戦い続ければ、自分は負ける。最強の師団長と呼ばれた自分がだ。ペンチ師団長はそれを自覚した。
「ならば、禁じ手を使わせてもらうぞ、ガチッチッチッチ」
ペンチ師団長は覚悟を決めると、笑った。その笑い声にゴリ将軍やカセイ参謀長は反応する。それを確認すると、ペンチ師団長は全身全霊を解き放った。
ドドドドドドドドド
地震が起こる。局所的な地震だったが、ノーフォーク基地を灰燼に帰すに十分なものだ。呆れたことに、そんな状況においても、カオスレッドとカオスバイオレンスの技の応酬は止むことなく続いている。
しかし、それ以外の者たちはさすがに瓦礫に埋もれていた。地震を起こした本人であるペンチ師団長も埋れかけるが、どうにか瓦礫を撥ね除け、地上に現れてくる。
「こんな地震で逃れようなんて、セコいんだよ!」
グレーの声が響く。グレーは瞬間的に次元を移動していたため、地震の影響を受けていない。
ゴリ将軍が瓦礫から姿を見せたのを見計らって、グレーが大技を仕掛けた。次元航行艦であるグレーライオンの爪が次元を超えてその場に出現する。
その爪がゴリ将軍を引き裂かんとした時だった。
「ゴリ将軍!」
瓦礫から這い出てきたカセイ参謀長がその事態に気づく。脚に仕込んだ反重力装置を起動させ、瞬く間にゴリ将軍に近づき、突き飛ばした。グレーライオンの爪は代わりに、カセイ参謀長の肉体を斬り裂く。
カセイ参謀長の身体には四本の亀裂が走っていた。それにより、腕は千切れ、脚はもがれ、内臓がまろび出ている。足元にはおびただしい流血が池のように溜まっていた。
「カセイ参謀長、なぜ……?」
ゴリ将軍が困惑した。カセイ参謀長は咄嗟の状態で、自分を助けることを選択した。その理由が掴めない。
カセイ参謀長はそんなゴリ将軍の困惑した表情を見ると、ふっと笑った。
「私はあなたが嫌いです。私よりも無能なはずなのに、いつだって私以上の戦功を上げてきた。ですが、今回は私の勝ちですね。私が守ってあげました。あなたは私の庇護下に……」
言葉の途中でカセイ参謀長は崩れ落ちる。そして、動かなかくなった。
学生時代からの戦友を失ったゴリ将軍は呆然としかけたが、今は戦場である。感傷に浸る時間などない。
「許さんぞ」
腹の底から声を上げると、濃霧を発生させてグレーの視界を奪った。隙を伺って攻撃を仕掛ける。
倒れるもの。立ち上がるもの。戦い続けるもの。三者の明暗が分かれ、戦いはクライマックスに向かっていた。
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