カオスイレギュラーズ集合

 アメリカ陸軍の戦車の合間を縫って、黄色のバイクが走ってきていた。イエローイレギュラーのバイクだ。

 イエローイレギュラーは砲塔にミサイルポッドと、バイクの武装を解放して、藁兵ストローマンを駆逐していく。やがて、藁兵の部隊にまで接近すると、バイクを降りて、自身の体内に仕込まれた武装を用いて戦い始めた。

 だが、いつものイエローイレギュラーと比べて精彩に欠いているようだ。藁兵たちはゴリ将軍のドラミングによって潜在力を引き出されているためだろう。いかにイエローイレギュラーといえど、容易く勝てる相手ではなくなっていた。

 戦いとは数である。いかに力量で劣ろうと、その数の前にはイエローイレギュラーもいずれ屈するであろう。


 パァン


 突如、ゴリ将軍を凶弾が襲った。それは基地内に潜んでいたイエローイレギュラーによる狙撃だ。

 しかし、その弾丸はゴリ将軍に届かず止まった。カセイ参謀長の重力を操る能力によって、寸でのところで止められたのだ。


「読んでましたよ、イエローイレギュラー。

 イエローイレギュラーは複数いる。藁兵と戦うイエローイレギュラーはいつものあなたと違いました。つまり、別のイエローイレギュラー。

 ならば、あなたはこうして狙撃を仕掛けてくるものと警戒してました」


 カセイ参謀長の神経質そうな顔がニタリとした笑みを見せる。

 それに反応して、悔し気な黄色い声が響いた。


「あーん、絶対決まったと思ったのに! でも、いいや。肉弾戦で蹴りをつける方が性に合ってるからね」


 その言葉とともに、両足が脚部に収納され、ジェット噴射が剥き出しになり、空を飛ぶ。イエローイレギュラーが突撃してきた。

 それと同時に周囲の空間が歪んだ。新たな参戦者だろう。この不意をつく連携を誰が見切れるというのか。


 ゴリ将軍とカセイ参謀長は見切っていた。

 ゴリ将軍の膨らんだ筋肉が次元転移して現れたグレーのダガーを防ぎ、カセイ参謀長が抜き様に放ったグラディウスがブラックの刀を弾いた。

 さらにペンチ師団長がカチカチと腕のペンチを鳴らす。次の瞬間、突風が巻き起こり、イエローイレギュラーの飛行軌道を捻じ曲げて明後日の方向へ逸らした。


「さすがは、もう一つの地球アナザーアースの剛の者。一筋縄ではいかんな」

「堅過ぎなんだよ、その筋肉! なんなんだ!」


 グレーとブラックが出現していた。その両者の攻撃をゴリ将軍とカセイ参謀長は防ぎきっている。

 さらに、頭上から光線が降り注ぐ。今度はブルーのようだ。

 ペンチ師団長が前に出る。カチカチとペンチを打ち鳴らすと、天空から電撃が落ちる。それはブルーを目掛けていたが、瞬時に移動されてしまった。


「ペンチの特殊な波動により気象を操るか。行動と事象のつながりは把握したが、原理は理解できない。引き続き分析する」


 こうなると、現れるものは、当然最後の一人。拓磨は補助装置アタッチメント重厚盾ヘビーシールドに切り替えると、ゴリ将軍の元へ駆け出した。

 天空からカオスレッドが降ってくる。落下するままにリングブレードを鞭状にして、ゴリ将軍を襲う。拓磨はその攻撃を重厚盾ヘビーシールドで受け切った。盾にはヒビが入り、今にも崩れ落ちそうだ。


「よく読んだな」


 カオスレッドが感心したような声を上げる。拓磨はその言葉に少し高揚する気分があったが、感情は隠した。


「いい加減、付き合いも長いんでな」


 減らず口を叩きながらも、カオスレッドを狙い、レプリカブレードの剣撃を放つ。カオスレッドはそれをリングブレードで受け、そのまま攻撃に転じた。互いに打ち合う。

 カオスレッドと打ち合っている。そのことは拓磨自身に成長を実感させるが、それ以上に破滅を意味した。打ち合うたびに、その装甲が剥がれ、その内側の改造された肉体をも破壊されていく。

 藁兵+5ストローマンプラスごになり装甲の厚みが増し、体内の骨格もより強化されているが、それでも受けられるダメージには限界があった。ただ打ち合うだけでも自分は死ぬのだろう。

 こんな時こそ願わずにはいられない。


――目覚めろ。俺の中の異海の力よ。


 拓磨は必死の思いで念じるが、それによって新たな力が覚醒することはない。

 気が付くと、カオスレッドから離れ、宙を浮かんでいる。


「修復する方の気にもなってくれる? そんなにポンポン壊されるのは困るのよ」


 アビ教官によって、空中を運ばれていた。相変わらず全裸で、その美しい筋肉が剥き出しになっている。

 その眼下では、カオスイレギュラーズと三人の異海将校アウターマンが凄絶な戦いを繰り広げていた。

 そして、もう一人。紫色の戦士が近づきつつあった。

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