追加戦士登場
ブルーとグレーが御子のいる祭壇に迫っていた。それに気づいたアイはほくそ笑んだ。
「ふふ、上手いこと、生贄が来てくれましたね」
「でも、来てるの、二人もいるのよ!」
「アハハー、あの人たち、何やってくれちゃってんのぉ。なんで二人も逃がしちゃってるのかしらぁ」
計算が崩れたのか、御子たちが慌て始める。それでも、アイだけは落ち着いた様子を崩さない。
「仕方ありませんね、私が止めるから、マイとモコは召喚の儀を」
そう言って、アイは振り向くと、手で印を結び、呪言を唱える。
ブルーに見えない鎖のようなものが纏わりつき、その動きを封じた。
「ちょっと、二人で成功させられるものなの!?」
「アハハー、やってみるかないんじゃなぁい?」
マイは両手を結んで祈りを捧げ、モコは杖を掲げて詩を綴った。
地面が揺れ、富士の火口から唸るような音が鳴り響き始める。
「分析を完了した。以降、この縛めは私には効果がない」
「けっ、俺を自由にさせてんじゃねぇぞっ!」
ブルーを縛っていた鎖が消滅し、そのまま飛行を続けていた。グレーはそのまま転移を繰り返しながら、先を急ぐ。まるで止められていない。
「止められませんでした。二人とも気をつけてください」
二人は御子たちのいる祭壇に駆け付けた。しかし、さすがに少女の姿をした御子たちを攻撃することはできない。
「よくわからねぇが、祭壇をぶっ壊せばいいだろ」
「了解した。追手がいる。早急に済ませよう」
突きに特化した形状のダガーであるジャマハダルを振りかざし、グレーは掲げられた木像を破壊していく。「でやっ!」の掛け声とともに、ブルーの腕から光線が発射され、祭壇が焼き尽くされた。
しかし、御子たちには攻撃が当たらないよう配慮されている。
「壊しましたね。今しかチャンスはありません、二人を生贄に!」
「できるの!? ねえ、そんなの、上手くいくの!?」
「アハハー、もう引き返せないよぉ」
御子たちがそれぞれの祈祷を捧げた。地面の揺れはさらに激しくなる。
やがて、富士の火口が噴火した。熱いマグマが吹き荒れ、熱された大岩が降り注ぐ。かに思えた。
しかし、噴火した火口から出現したのは影のようなものである。
「これは、成功でしょうか。
富士の火口は異海への門。召喚に応じてくれたのでしょうか」
「でも、なんか、ちょっと様子がおかしくない?」
「アハハー、わかんなぁい」
御子たちが様子を窺う。影は次第に紫色の装甲を纏ったような姿に変わっていった。それは、さながら、カオスイレギュラーズの色違いのようにも見える。
紫色の戦士は付近の様子をチラと眺める。マスクで顔はわからないが、どことなくニヤリとした笑みを浮かべているような仕草だ。
そこに拓磨とシャシン親衛隊長がその場へ辿り着いた。状況はわからないが、ブルーとグレーを止めねばならない。二人は臨戦態勢に入る。
それに紫色の戦士が反応した。両腕を広げるような動作を行う。その瞬間、周囲に衝撃波が襲った。拓磨が吹き飛ばされ、シャシン親衛隊長も飛ばされる。その衝撃波は彼女の能力で無効化できるものではなかった。ブルーとグレーはそれぞれに衝撃に耐え、その場に留まる。御子たちはなぜか衝撃波の影響を受けなかった。
紫色の戦士は納得したような仕草をすると、瞬時にグレーのもとまで飛んでいく。
そして、グレーを持ち上げ、肩に背負うと、バキバキバキとその背骨を折った。ロンドンはテムズ川に架かる実在の跳ね橋を由来とする、レスリングの奥義、タワーブリッジである。あまりの鮮やかな技の切れに、当のグレーでさえ、見守ることしかできなかった。
背骨を折られたグレーは致命傷である。もはや、動くことはできない。
「あ、あなたは……どなたなのですか?」
御子のアイがおずおずと問いかける。紫色の戦士は思案気に首をかしげると、言葉を発した。
「名前かな、そうだねぇ。
そうだ、こういうのはどうだろう。カオスバイオレンス……」
その問答によって生じた隙をブルーは逃がさない。腕から光線が放たれ、カオスバイオレンスを襲った。
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