御子発動
地球侵略方面軍の幹部会議が行われる。幹部の面々の前に、総統の御子が降りてきた。。
御子のアイは花魁のような派手な着物を纏い、様々な色の髪飾りで着飾っている。反対に、マイは地味な色のゆったりとしたトゥニカを纏い、裾の大きいヴェールを被っていた。胸元には十字のロザリオを下げており、シスターというべき服装である。最後のモコは白いローブを着ていた。色鮮やかな貴金属のアクセサリを全身に纏っているが、さながら古代エジプトのファラオというべき見た目のようだ。
「皆の者、この状況でよく耐えています。今が辛抱の時です。今に状況も良くなるでしょう」
アイの優し気な声が響いた。だが、それがお為ごかしに過ぎないことを、気の強い御子であるマイならずとも、会議の出席者たちは実感している。
カオスイレギュラーの攻撃はもはや日本に留まらない。ハワイ、アメリカ西海岸のアメリカ軍を解放し、国家単位での解放戦線が盛り上がっている。
「もはや、ここまででしょう。ゴリ将軍に地球方面軍の総司令は任せてはおけぬ。彼は更迭し、新たな総司令を置くべきです」
そう発言したのはシシ参謀総長だ。獅子の頭部を持つ
彼は北アメリカ方面の責任者であり、カセイ参謀長に続いて、最も追い詰められている軍人の一人だった。
シスター姿のマイはシシ参謀総長を睨みつけ、何かを言いたげにしたが、さらに怒声が響く。
「その通りです。ゴリ将軍の指揮こそが
東欧方面の責任者であるニンギョウ参謀長である。人形のような印象を抱かせる外見に改造されており、そのテーブルには洋の東西を問わぬ様々な人形が置かれていた。神経質そうな表情が表すように、緻密な戦略を信条とする軍人である。
その後には何人もの幹部たちが立ち上がり、事態は喧々諤々の議論となった。
マイとモコは不快気に眉を潜ませる。
「黙るがいい、ものども! ゴリ将軍に任せているのは朕の決定である。異議があるというのか!」
しわがれた野太い声が響いた。いつも影でしか姿を見せない総統から発せられたものである。
その声を聞いた幹部たちは、まるで電気を帯びたように痙攣し、やがて大人しく席に戻った。
「総統の決定に物申すとは、ほんと身の程を知らない人たち」
マイは苛立ちを隠さないままに、そう吐き捨てる。
それに対して、モコには笑顔が戻っていた。
「アハハー、ゴリ将軍、カセイ参謀長、悪いんだけど、今回は私が指揮を執らせてもらっちゃうよー。大事な、大事な作戦があるんだー。
トケイ技官長、準備はできているよね!」
その言葉に、ゴリ将軍とカセイ参謀長はうやうやしく首を垂れる。トケイ技官長はほくそ笑みながら、返事をした。
「もちろんですとも。御子のお言葉通り100%の再現をしております。ご期待に添えるものと私も太鼓判を押しました」
それを聞き、御子たちは目を見開き、空虚さを感じさせる瞳を剥き出しにしつつ、口元を歪ませる。
「私たちはこの時のために準備してきたのです。皆の者よ、協力をお願いしますよ」
アイの声が響き渡った。幹部たちは神秘を目の当たりにしたかのように、彼女たちの姿を眩しく窺っていたのである。
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