地球侵略、最後の一手
「ふふ、
晴着を纏った御子のアイが微笑みながら、幹部たちに告げる。幹部たちは拍手でその言葉を迎え入れた。
だが、それだけでは止まらない。アイの体内からもう一人の御子が出現した。ドレスで着飾った美少女、三つ子の片割れであるマイだ。
「あのねぇ、負けてばかりの人もいるんでしょ。そんな喜んでばかりじゃいられないはずよ。
ゴリ将軍、説明しなさい」
マイは幹部たちを見下すような視線を送りながら、最後にはゴリ将軍を見つめながら、その言葉を伝えた。
ゴリ将軍はかしこまりながら、その質問に答える。
「はっ、東アジアはほぼ陥落しているといえますが、ただ、日本の北海道だけはいまだ支配地にありません。カオスイレギュラーズにより侵攻を跳ね返され、一度は支配下に置いた基地も取り返されました。
今後の対応については東アジア方面軍の軍事担当官であるカセイ参謀長に一任しております」
それを聞き、マイはその見下すような視線をカセイ参謀長に送った。アイは優し気な視線を送ってきている。
アメとムチを体現したような仕草であった。
更迭されるに足る結果しか出していない。そう自認するカセイ参謀長には、自分でも驚くほどに効果的だと思った。アイの言葉を聞くたびに彼女のために忠誠を尽くしたいと感じてしまう。
「前回の戦いですが、まったくの戦果なしというわけではありません。
そう語ると、周囲の幹部たちから「オオオォォ」という歓声が上がった。それに気をよくして、カセイ参謀長は続ける。
「これにより、カオスレッドの位置を特定できました。現在は監視衛星を駆使して、常にその動向を見ることができます」
それに対して、ゴリ将軍が口を挟む。
「カオスレッドの位置を特定できたとしよう。そこから、どう勝利を掴むというのだ?」
その質問は想定内のものだった。カセイ参謀長はほくそ笑みながら答える。
「戦いとは力の強いものが勝つのではありません。手段を選ばず、勝ちの目を取ることができるものが勝つのですよ」
それを聞き、周囲の幹部たちは何を思ったか。卑怯な手段を控えるように思ったものがいるだろうか。否。卑怯かどうかなど後世の歴史家が自由に判断するもの。今を生きる軍略家にとって、勝つことが全てだ。
それは、世界帝国のエリート軍人に共通する思想であった。
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