Another.03 カオスレッド抹殺指令

藁兵+2

 彗佐せっさ拓磨たくまはアビ教官の研究所ラボに来ていた。改造された肉体の調整をするにも、新たな兵装を身に着けるにも、アビ教官を頼る必要がある。

 もちろん、ほかの研究所や整備屋は山ほどあるが、どれだけ信用できるかというと疑問である。アビ教官の研究所が最も信用できた。それは、消去法で選んだようなものだ。拓磨を利用するつもりである、そのことが最低限のクオリティを担保していた。


「おめでとう、拓磨くん。あなたの功績は評価されて、藁兵+2ストローマンプラスにへの昇進が認められたのよ。ふふ、誇っていいわ」


 アビ教官はそんなことを言う。けれど、そんな言葉には意味がないとも感じた。


「それは、何か特典があるのか? 俺に得られる利点はなんなんだ?」


 気が付いたら、アビ教官に対してはタメ口をきいている。覚醒して間もないころに出会ったので、敬語を話す余裕がなかったが、その感覚が今に至るまで続いているのだ。

 けれど、アビ教官はそんなことは気にする様子もない。


「そうねぇ、あなたの望む強化をしていいと思うけど、どうかしら? こんな強化の仕方をしたいっていう希望はあるのかしら?」


 拓磨の質問は質問で返された。だが、それに返すのは緊張を要するものだったが、嬉しいものでもある。

 自分の望んだ強化兵装を得られる機会なんて、そうはないだろう。


 現在の拓磨の兵装は、

 念力を磁場として放つ念力砲サイコキネシスキャノン

 ドリルであらゆるものを削る掘削甲ドリルガントレット

 ワイヤーによりその腕を伸ばす蛇蔦ワイヤーバイパーの三つである。


「そうだな。装甲の弱さが気になっている。この前も、ブルーの一撃で沈んでしまったしな。装甲を強化してもらえるなら、ありがたい」


 それを聞いて、アビ教官は薄く笑う。


「いいんじゃない。装甲なら、この研究所ラボにもあるのよ。今やって、あげましょう」


 アビ教官はラバースーツのジッパーを下ろす。全裸になっていた。

 拓磨にもわかったことがある。アビ教官は拓磨のような藁兵を人として見ていないのだ。だから、簡単にその前で着替えることもできる。身体を見られても、なにも思わないのだろう。


「ああ、そうそう。忘れる前に言っておかないと。

 あなたが前回手に入れたイレギュラーロボの欠片だけど、とても役に立つものなの。この調子で、また手に入れてきてもらえないかしら。

 前回のはカオスレッドのものだったから、できれば、ほかの四人の装甲だとか巨大メカの破片だといいわねぇ」


 アビ教官は手術着に着替えていた。着替え途中にそんなことを告げる。

 そして、紫色に光るビームメスを手にして、にやりと笑った。


「ふふ、手術を始めましょう」

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