巨大ロボ VS 巨大怪人

 天上では巨大化したヘビイチゴ師団長とカオスイレギュラーロボによる超常の戦いが繰り広げようとしていた。

 その下方、地上は暴れ回るヘビイチゴ師団長の肉片によって惨憺たる有様だ。


 だが、それにより起死回生の手を打たんとするものもいる。強い力は使いようなのだ。

 彗佐せっさ拓磨たくまは自身の強化アームにヘビイチゴ師団長の肉片を取り込んだ。アームに組み込まれた電子頭脳がその肉体を分析する。空のカートリッジにその情報が書き加えられていた。


「これはワイヤーか」


 ビュッ


 拓磨の腕からワイヤーが発せられる。ヘビイチゴ師団長の能力を取り込んだのだ。

 そのワイヤーはカオスイレギュラーロボに向かい、放たれる。ロボの片腕に巻き付いた。それを引き寄せることで拓磨はロボの腕に昇り、再度ワイヤーを伸ばして、肩にまで辿り着いた。


「なんか来たよ」


 イエローイレギュラーがいち早く拓磨の存在に気づく。コックピットに搭載されたレーダーが感知したためだ。


「私が対処しよう」


 ブルーが返事をする。そして、カオスイレギュラーロボの左腕に意匠された紋様が青く輝いた。それとともに肩から光線が放たれる。

 それは拓磨を襲わんとしたものだ。


「うわぁっ」


 そのビーム攻撃は目視できた。拓磨の片眼は魚眼となっており、広い範囲を見渡すことができる。

 思わず肩から飛び退いた。空中で再びワイヤーを出すと首筋に纏わせ、また登り始る。


「体格の差があり過ぎて、正確に当てるのは困難だ」

 それを聞いたカオスレッドがフッと笑う。

「まずは目の前の敵に集中するのだ。激しく動けば振り落とせよう」

 その言葉とともに、イエローイーグルであった右腕から剣の柄のようなものが射出される。それを握ると、ブルーの光のエネルギーによって刀身が出現した。


「剣術の極意は踏み込みにあり。体運びはわしに任されよ」

 ブラックの発言とともに、左足が大地を蹴り、一跳びにヘビイチゴ師団長との距離を詰める。

「うおぉぉぉぉおおおお」

 グレーの雄叫びとともに、右足が着地する。

「俺だけ地味じゃねぇか」

 そんなぼやきがありながらも、その瞬間にカオスイレギュラーロボの剣が閃いた。


 ヘビイチゴ師団長はその腕であるツタを伸ばし、カオスイレギュラーロボを拘束しようとする。だが、そのツタはことごとくが流れるような剣の動きによって切り裂かれ、地に落ちた。そして、その攻撃を掻い潜ったカオスイレギュラーロボの剣がヘビイチゴ師団長を両断する。


「秘剣! 混沌の太刀」


 光の剣が蛇のように姿を変え、ヘビイチゴ師団長の体内を駆け巡る。剣は縦横無尽に駆け巡り、肉体のことごとくを粉砕した。


「くそっ、お前たちさえいなければ! お前たちに出会わなければ! こんな苦しい思いはしなくて済んだものを……。こんな一期一会は最悪だ」


 怨嗟の声とともにヘビイチゴ師団長は消滅した。もはや、その肉が増殖することもない。


 一方、拓磨は激しく立ち回るカオスイレギュラーロボから落ちないよう必死で食らいついていた。


「せめて一撃、せめて傷跡だけでも!」


 拓磨は覚悟を決め、ワイヤーの補助装置アタッチメントを解除し、掘削甲ドリルガントレットに切り替える。


「せぇーのっ!」


 ドリルを回転された手甲でロボの首筋を思い切り殴りつける。ガキィンと派手な音がした。

 だが、次の瞬間、カオスイレギュラーロボは激しい踏み込みを行っており、拓磨はロボの首から振り落とされた。何十メートルもの高所から落とされる。


 拓磨はパニックに陥りそうになりながらも、強化アームのカートリッジを切り替える。念動力砲サイコキネシスキャノンを地面に向かって打ち、どうにか落下の衝撃を和らげた。

 それでも、全身を強い衝撃が襲い、強化された肉体や補助機械の数々が壊れていく。もはや、立ち上がることもできなかった。

 けれど、片手に何かを握っていることにも気づく。見ると、それはカオスイレギュラーロボの首を構成する金属であった。


「へへ、なんだかわからんものだけど、手に入れたぞ、へへへ、やった」


 意識が混濁しながらも、僅かながらの成果に高揚する気分があった。気を失う手前で、どうにか次元転移装置のスイッチを入れる。

 転移とともに意識は薄れていった。

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