巨大メカ合体

「ぐぅええぇぇぇぇえええええ」


 巨大化したヘビイチゴ師団長の雄叫びが響いていた。その肉体は常に膨れ上がっており、ヘビイチゴ師団長が制御しきれない肉体は肉片として切り放たれる。周囲に撒き散らされ、無秩序に周囲を荒らし回っていた。


「ふん、こいつも所詮は帝国の傀儡か。だが、これ以上無茶苦茶させねぇ。グレーライオン、来い!」


 グレーが音声認識機能で次元航行艦を呼び寄せる。周囲の空間が歪み、その歪みからライオンの形状をした灰色の次元航行艦が出現した。その目から放たれる光に吸い寄せられ、グレーは空中を浮遊し、搭乗する。


「ガオオオォォォン」


 咆哮とともにグレーライオンが始動する。前足の爪でヘビイチゴ師団長の肉片を切り裂き、その牙で肉片に喰らいついた。

「くそっ、数が多い!」

 グレーが嘆く。肉片の量が多くて、ヘビイチゴ師団長の本体にはなかなか辿り着けないのだ。


「ふむ、お主が来るというのか。よかろう、今は力が必要じゃ」


 ブラックが何者かと会話している。そして、ブラックの足元から黒い雄牛が出現した。ブラックが頭に乗ると、雄牛が地面に立ち、雄々しく吠える。

 黒い雄牛はその角を振りかざし、ヘビイチゴ師団長の肉片を弾き飛ばし、ヘビイチゴ師団長に突撃する。


「グレーよ、お主は肉片を片付けよ。わしと時の黒牛ブルクロノスは本体を叩く」

「けっ、そっちがおめぇの役割だろが! 俺が本体を撃つ」

 彼らの言葉とは裏腹に、その連携は確実に肉片を片付けつつあった。


「この姿では戦いづらいか」


 銀色の鎧に青い紋様を纏ったブルーが呟く。そして、青い石の嵌った小型のスティックを取り出すと、天に掲げた。

 ブルーの身体が巨大化していく。翼を羽ばたかせ、空を飛ぶ。


「せいち!」


 掛け声とともに腕から光線を放つ。肉片の群れを焼き払うと、隙を見てヘビイチゴ師団長を殴りつけた。


「こちら、イエローイレギュラー。敵が巨大戦力を投入。イエローイーグルを戦線に投入ください」


 イエローイレギュラーの呼びかけに応じ、鳥型の戦闘機イエローイーグルが自動操縦で近づいてくる。イエローはバイクに乗ると、近くのビルの壁をバイクで疾走し、空へと舞い上がった。それを戦闘機が拾い、バイクごとイエローイーグルのコクピットにドッキングした。

 バイクはそのまま操縦席となり、イエローはバイクに跨ったまま巨大な戦闘機を操縦する。


――クアァァァァァ


 超音波を発し、肉片やヘビイチゴ師団長の動きに不調和音を起こした。そして、動きの鈍った肉片をミサイルで瞬滅する。


「そうだな、この地にはかつて古代文明があった。そして、巨大ロボを遺したのだ。後世のためにな。そんなことがあってもいいだろう」


 カオスレッドがぼそりと呟いた。

 その瞬間である。大地が裂け、その裂け目から歯車のような形状の巨大な機械が出現する。何重ものリングで構成されたような不思議な構造だ。


「ふっ、来たな」


 少し嬉しそうにカオスレッドが笑う。巨大なリングメカにレッドが乗り込んだ。


「聞くのだ、我が配下のものどもよ。これから合体する。俺たちは合体できるのだ」


 その言葉とともに巨大兵器内のリングがそれぞれの方向に回転した。回転するたびに形状が円筒のように変わり、おぼろげながら四肢のようなものが出現する。やがて、そこに四体のロボが引き付けられた。

 グレーライオンの姿は右足に変化し、黒い雄牛が左足になるとブラックは雄牛の体内に取り込まれる。ブルーは左腕と化し、イエローイーグルは右腕に変形した。リングはさらに回転し、巨大兵器からは頭部が出現する。リング状の兜をかぶったような頭からは狼のような顔が覗いていた。やがて、歯車がカチッと止まると、その目に光が宿る。


「完成、カオスイレギュラーロボ!

 ふははははは、我が手足として働くがよい」


 文字通り、四人は手足となり、カオスイレギュラーロボのパーツと化していた。


「こんな変形があったのか。面白いじゃねぇか」

「五人の兵器が合体……。面妖なことじゃの」

「この形態、不思議だ。新たな情報が次々に入り込んでくる」

「ちょっと、この体勢、めちゃキツいんですけど……!」


 イエローはバイク型の操縦桿でハンドルを掴みながら、腕の揺れに必死で堪えていた。肉体を機械的に補強したサイボーグでなければ、とても耐えられなかっただろう。


 カオスイレギュラーロボは増え続ける肉片を潰しながら、ヘビイチゴ師団長に向き合う。

 そして、もう一人、戦いに参加したものがいた。藁兵+1わらへいプラスいち彗佐せっさ拓磨たくまである。

 ブルーの放った光線により絶命したかと思われた彼であったが、その際、念力砲サイコキネシスキャノンを充填する途中であり、全身がサイコパワーで覆われていた。そのため、光線の破壊力は弱まっていたのであろう。

 拓磨はあまりの状況に愕然としつつも、カオスイレギュラーロボに立ち向かわんと駆け出した。

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