作戦実行

 彗佐せっさ拓磨たくま藁兵ストローマンに混じって出陣する。だが、彼の立場は今までとは違った。すでに、藁兵+1ストローマンプラスいちとなっているのだ。藁兵の中でもエースと呼ぶべき存在である。


 ――成果を上げなくては……!


 拓磨は今回の進軍に奮い立っていた。手柄を上げ、異海将校への道を確保したい。褒賞を得て、新たな補足兵器アタッチメントを購入することも重要だ。異海将校アウターマンのDNAの入手もできればしておきたい。ちらりと師団長の様子を窺う。そんな隙は感じられなかったけれど。

 高揚とともに、焦りが頭の中を支配してくる。いきり立つ感覚をどうにか抑えてながら、戦いの時を待った。


「くくくく、ついに作戦実行の時が来た。我らが力を示す時だ! この時、この一瞬、そして、この邂逅は一生に一度だ。皆の者、心を合わせよ! いざ出陣!」


 今回の指揮を執るのは、異海将校アウターマンのヘビイチゴ師団長だ。赤い粒粒で構成された顔に緑色の蔦が纏わりつく。その姿はヘビイチゴを思わせるものだった。

 ヘビイチゴ師団長はゲキを飛ばす。藁兵たちはそれに応じて、鬨の声を上げた。洗脳された兵士といえど、その言葉には士気が上がったかのように見える。

 やがて、異次元への扉が開いた。灰色がかった時空の歪み。その歪みを通って、もう一つの地球アナザーアースから本来の地球オリジナルアースへと転移するのだ。


 転移した軍勢が本来の地球オリジナルアースへと到達した。

 そこに五色の戦士が仁王立ちしている。レッド、ブルー、イエロー、ブラック、グレー。混成戦隊カオスイレギュラーズだ。


「な、なぜ、待ち受けている!? 我らの作戦を見通していたというのか!? それとも次元移動を感知する術があるのか?」


 ヘビイチゴ師団長は本部への通信を意識し、自身の感じた疑問と考察を投げかける。自分の得た情報を最大限本国に伝えようとしているのだろう。


 しかし、拓磨にはそんな無私の愛国意識などない。ただ、戦果を逸る気持ちだけがあった。


――今こそ、自分の最大火力の攻撃を当てるチャンスだ!


 利き腕の補助装置アタッチメント念動力砲サイコキネシスキャノンを取り付けている。

 念動力砲に全身の意識を集中させた。念動力が全身に湧き立ち、砲撃に集中していくのを感じる。


――よし、撃てる。


 そう感じた時だ。


――そうか、撃てるか。


 頭の中で声がした。

 そして、その瞬間、カオスイレギュラーズの一人、ブルーと目が合った。


――君がこの中で一番手強そうだ。最初に相手をしよう。


 抑揚のない声が拓磨の頭に直接語りかけてくる。


「お前は何だ? 俺は……」

 その呼びかけにパニックになりながらも、拓磨は吠えた。

「お、お前らを一掃してやる!」

 念動力砲を放つエネルギーが溜まっている。それを一気に開放するのだ。


――君にそんなことはさせない。


 頭の中で声が響く。

 そして、その瞬間、ブルーの位置が変わった。テレポートだ。

 拓磨の目前に現れたブルーは掌底を放つ。その掌底から光のエネルギーが解き放たれる。


「せいやっ!」


 光のエネルギーは拓磨を貫いていた。拓磨は全身の骨が折れる感覚を味わう。全身が焼かれていた。


 ――お、おい、俺が最初にやられるのかよ……。


 口惜しい結果だった。

 腹部を貫通した光により、その生命活動さえままならぬはずだ。


――いや、俺は死ぬんだ。


 意識が薄れていた。拓磨はそのまま全身の疲労と痛みとともに、昏睡の世界へと誘われていた。

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