四章 燃ゆる帝国と雨の魔女
さいごの手紙
清らかなるフリューエ・カイラ──
この手紙があなたの元へ届く頃には、私はもう半島はおろか、どこの大地にも立っていないことでしょう。
私はそれほどまでに、生き永らえたまま償うことのできない罪を犯してきたのです。
とはいえ私たちは目論見通り、公子様も騎士様も公国の外へお連れすることが叶いました。
首尾良くと呼べるほどの経緯では決してありません。
こうして伯母様へ最後の文を寄せられたのも、道中、スティルク領にていくつものご厚意に甘えることができたからです。
タバサ男爵令嬢をご存知でしょうか?
もし彼女や、エリックという名の騎士に会う機会がありましたら、ぜひ私たちに代わり礼を述べてはいただけませんか。
おそらく今頃は彼女らも、クロンブラッドでなんらかの罪に問われている最中です。少しでもあの二人の罰が重くならないよう、どうか伯母様からもお口添え願います。
特にエリックさんは私から見てもとても素敵な騎士様でした。
ほんのわずかでも運命が掛け違っていたら、グレンダ様はとことん甲斐性なしな公子様よりも、彼を生涯の伴侶に選んだのではないかと思うほどに。きっと彼は、伯母様のお眼鏡にも適う紳士です。
私も叶うことなら、彼のように達者な男性と結ばれる生涯を送りたかったものです。
伯母様もすでにご存知の通り、長らく各地で息を潜めてきた連中が、表舞台へ張り切った顔を見せつつあります。
奴らが先に狙うは公国か、帝国か。
私もさほど遠くない未来にこの目で確かめることとなるでしょう。
ついに徹底抗戦の時が来ました。
たとえどれほどの代償を背負うことになろうとも、私は必ず最後まで、ボムゥル屋敷のメイドとしての務めを果たします。
公国を守るのはグレンダ様の仲間たち……各地で散らばったエリックさんにも劣らぬ優れた騎士たちの役目です。
だからどうかお二人と、あいつのことはこのセイディにお任せください。
伯母様も、ご自身の安全を第一になさってくださいね。
自治団の皆さんは伯母様がご無理せずとも、誰もが騎士にも負けない高い志としなやかな強さを兼ね備えていると、長らく先導してきた私と、なによりグレンダ様からのお墨付きがありますので。
ええ……この給仕服と花の髪飾りに固く誓って。
──愚かなる
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