第2話 目的地
「聞こえなかった?」
「い、いや。聞こえましたよ」
「そう。どうなの?」
「......」
はっきり言って、即答することがができなかった。現状、宮廷魔導師を追放されたばかりで、人という存在が信用することが難しかったから。
また、リゼさんが誘ってくれた仲間というのがどのようなものかわからない。
そう考えていると、アルくんが問いかけてきた。
「ダイールさんは宮廷魔導師って言われていたけど、今は違うよね?」
「え......。なんでそれを知っているの?」
アルくんの言った言葉に驚きを隠せず、尋ねてしまった。
「簡単なことだよ。お姉ちゃんが仲間に誘ったとき、即決して決めることができなかったこと。それに加えて、僕を襲ってきたやつらが宮廷魔導師といった瞬間、表情が暗くなった。このことから今は宮廷魔導師じゃないのかなって思った」
俺はその発言に何も言い返すことができなかった。
(こんな小さい子がここまで予測することができるなんて
「アルくんの言う通り、すでに俺は宮廷魔導師ではないよ」
「そうだよね」
「でもね、仲間になるかどうかはまた別の話」
俺がそういった瞬間、アルくんが声を大きくして言った。
「なんで?」
「まあ、簡単に言えば人を信用することが難しいと思ったから。だから仲間になるかは別問題」
すると、リゼさんはなぜか確信を持った表情で言う。
「ダイール、あなたは私たちと仲間になって後悔はしないわよ」
「なんでそれを言えるのですか?」
「あなたが今言った発言よ」
「??」
その言葉を聞いて、俺は首を傾げた。
「私たちについてくればわかるわ。確実にあなたは私たちの仲間になるから」
「......。わかりました」
そして、俺はリゼさんとアルくんの後をついていった。
路地裏から十分も歩かないうちに、人気がなくなった。そんな場所で、ぼろ小屋が見えてきた。
(こんな場所に何かがあるのか?)
宮廷魔導師として働いていた時、ここら辺に来たことはある。だけど、人が多く集まれる場所はなかった。
すると、目の前のぼろ小屋に入っていった。それに続くようにアルくんも中に入ったため、俺も恐る恐る中へ入った。
ぼろ小屋の中は、壊れた椅子やテーブル、そして大きなクローゼットが一つだけであった。
リゼさんは俺たちの方を一瞬向いて、クローゼットの中を開けた。だけど、内装は普通のつくりをされていた。
「どうしたんですか?」
「見ていればわかるわ」
リゼさんはクローゼットを見ながら小声で何かを唱え始めた。その瞬間、床がゆがみ始めて、地下に続く階段が現れた。
「え......」
目の前の光景に驚きを隠しきれなかった。
(こんな場所に隠し通路があるなんて......)
それに、今のは魔法の類だろう。それを今まで気づけなかったことに恥ずかしく感じた。
「さ、行きましょう」
俺は言われるがままリゼさんとアルくんの後をついていった。
ものすごく長い階段を下っていき、五分もたたないうちに大きな鉄の扉が現れる。リゼさんが鉄の扉をノックした途端、奥から声がした。
「合言葉は?」
「真の正義と悪の討伐」
それを言った瞬間、鉄の扉を獣人族が開けた。すると、俺の顔を見て獣人族は表情を顰めた。
「こいつってもしかして......」
「ビーが思っている人よ」
リゼの言葉に、ビーは声を荒げた。
「なんで敵を連れてきた!!」
「敵じゃないわ。仲間になる可能性がある人」
「は? お前、ここがどういう場所かわかっているのか!?」
「わかっているわ」
ビーという人の表情は怒り狂っているが、リゼさんは平然としていた。
「なら、なんでリスクを負うんだ!!」
「この人にそれほどの魅力があると思ったからよ」
「......。そうかよ。説明はしてあるのか?」
「していないわ」
すると、ビーはため息をついた。
「自分のミスは、おまえ自身がどうにかしろよ」
「えぇ」
ビーはこの場から去っていき、リゼさんとアルくんは俺の方を向いてきた。
「悪いわね。仲間がこんな態度をとってしまって」
「いえ、お気になさらないでください」
「じゃあ、合わせたい人がいるからついてきて」
その言葉に頷き、リゼさんとアルくんの後をついていった。
道中、そこらへんにいる人たちは俺のことを怪しげな表情で見ていた。
(ここはなんなんだ?)
俺はそう思いながら歩いていると、目の前に一つの扉が出てくる。
「ここよ」
そう言いながら、リゼさんが扉を開けて中に入った。それに続くように俺たちも中に入る。
すると目の前には、すでに死んだとされている魔王---ゼアルが座っていた。
「ようこそ、デット・ゴーストへ」
※
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闇の英雄~宮廷魔導師を追放されましたが、闇ギルドに勧誘されました。依頼主が王女や王子なのはなぜですか?? 煙雨 @dai-612
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