闇の英雄~宮廷魔導師を追放されましたが、闇ギルドに勧誘されました。依頼主が王女や王子なのはなぜですか??
煙雨
第1話 追放と出会い
「おい嘘つき、ここから立ち去れよ」
「え......?」
突然、宮廷魔導師のトップであるアル・ブレインに言い渡された。
「お前、シャカルが横領しているって言っていたよな?」
その言葉を聞いた瞬間、俺は驚きを隠しきれなかった。なんせ、上司のシャカルさんにバレないように、相談をしていた。それなのに宮廷魔導師全員がいる前でこのことを言われてしまったのだから。
「......。はい」
「よく嘘をつけたな」
「な、何が嘘なんですか?」
「横領の件に決まっているだろ!! 調べた結果、そんな証拠は一切なかった」
「は?」
(そんなことはあり得ない)
俺はこの目でシャカルさんが宮廷魔導師が使用できる資金を持ち去っているところを目撃した。それなのに、証拠がなかったなんて......。
「は? じゃねーよ。お前には失望したよ」
「し、失望って......。信じてください」
「いやいや、こっちは調べた結果を言っているんだから、お前が嘘をついているのはわかっているんだよ」
「......」
言葉が出てこなかった。ふと、ブレインさん以外の方を見ると、全員が俺の事を蔑む目でこちらを見ていた。
(なんでそんな目で見るんだ)
「お前のことをここまで育ててくれたシャカルを騙そうとした。それについて、俺は重く見ている」
(重く見るって......)
もう頭の中が真っ白になり、意味が分からなかった。
「だから、早くこの場から出て行け。明日からここには来なくていいぞ」
「それって......」
「宮廷魔導師を追放するって言っているんだ」
俺は、今出せる最大限の力を振り絞って、声を出す。
「ブ、ブレインさん。信じてくださぃ」
「黙れよ。信じた俺がバカだった。お前みたいな噓つきは宮廷には要らない」
そう言われた時、シャカルさんの方を向いた。すると、俯きながら周りの人から慰めてもらっていた。
その光景を見て、俺の行った行動は間違っていたのかと思ってしまった。
「そんなところに突っ立っていないで、早くこの場から出て行け」
「は、はい......」
俺は何も言えないままこの場を去ろうとした。その時、シャカルさんの方を一瞬見ると、俯きながら俺の方を嘲笑うように見ていた。
(は?)
やっぱり、こいつは俺の事を騙していたんだ。それを確信した瞬間、怒りが込み上げてきた。
だが、今からみんなを説得することも出来ず、この場を後にした。
♦
宮廷を後にして、何も考えずに広場へと向かった。
(これからどうするか......)
新しい職を見つけるにしても、分が悪すぎる。なんせ、宮廷魔導師を追放されたと言って、雇ってくれる場所がどれぐらいあるだろうか。
それに加えて、追放理由が上司を陥れようとしたことになっている。実際は違うが、宮廷と言う立ち位置がある以上、俺よりも宮廷を信じるに決まっている。
はっきり言って、現状雇ってくれる場所は無い。
(クソ)
「それもこれも、シャカルが悪い......」
今までも、シャカルから雑用などを押し付けられていた。それでも、上司だから何も文句も言わずに仕事をこなしていた。
なんせ、宮廷魔導師だ。人族の中でも最高峰の職業。そんな人が悪い人のわけがない。そう思っていた。
だからこそ、シャカルが横領をしているところを見た瞬間、驚きを隠しきれなかった。
(俺はあの選択が間違っていたのか?)
いや、俺の行った選択は間違っていなかった。だって、宮廷とは国のために働く存在であり、自身の利益のために働く場所ではないから。
「はぁ~......」
ため息をつきながら、近くにある出店で昼食を買って食べ始める。
そこから数分もしない内に食べ終わり、宿屋に帰ろうとした。
(ここ、ちょっと危ないけど近道なんだよな)
路地裏を歩いていると、数人の男性がフードを被った男の子を恐喝していた。
(助けよう)
俺がどんな状況であろうと、助けられるなら助ける。それが俺にとってのモットーだから。
そう思い、すぐさま無詠唱で左手に
すると、地面に穴が空き、男性たちは驚いた表情でこちらを見てきた。
「なんだお前」
一人の男性がそう言った瞬間、隣にいる男が俺の顔を見て驚いていた。
「こいつ、宮廷魔導師だ」
それを聞いた瞬間、恐喝していた男らは、捨て台詞を吐きながらこの場を去って行った。
(戦闘にならなくてよかった)
そう思いながら、恐喝されていた男性の元へ駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
「はい......」
「どこか痛む場所とかあります?」
「いえ、大丈夫です」
目の前の男の子がそう言った瞬間、後ろから一人の女性がこちらへ近づいてきた。
「アル、大丈夫!?」
「うん」
「これだから人族は......」
(え、今なんて言った?)
女性が言った発言に驚いていると、女性が言った。
「アルの様子をいている限り、あなたが助けてくれたのよね?」
「はい」
「ありがと。ましな人もいるのね。助けてくれてありがとう」
「あはは......。どういたしまして」
(なんなんだ......)
女性の言葉に飽き飽きとしていると、アルと言う少年が言う。
「この人、強いよ」
「そ、そうなの?」
「うん。それに悪い人じゃなさそう」
「へ~」
(??)
俺は二人の会話を聞いていると、女性が話し始める。
「自己紹介がまだだったね。リゼ・キアル。よろしくね」
「ダイール・ストルです。よろしくお願いします」
「一つお願いをしてもいい?」
突拍子もなくいってきたため、首を横にかしげる。
(なんだろう?)
リゼのことを見ていると、こちらに手を差し伸べて来た。
「私たちの仲間にならない?」
「え?」
この出会いが、俺の人生を一変させることをまだ知らなかった。この世界がどれほど腐りきっていて、誰が敵で、誰が味方なのかすらも俺はわかっていなかった。
※
・続きが気になる‼️
・更新頑張れ
など思っていただけましたら、ブックマークやレビュー【☆☆☆→★★★】で応援していただけると幸いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます