最近のRPGってやつ

麻木香豆

第1話



 じわじわと迫りくる影。

「くそっ! これを四面楚歌というのか? こっちもあっちも敵に囲まれている! うそだろ? いつものRPGってさ、こんなことないじゃん。なんでこんなこと起こるんだよ」

 勇者は混乱した。


「ああ、こんなところで混乱するなよ。調子にのった製作陣がそういう設定作っちゃったんだよ。おい、混乱を解く魔法、魔女さん!」

 バトラーは魔女に指示をする。


「たくさ、なんで女はいつも回復系なの?で、打撃攻撃は弱い設定だし? あ、女はいつまでも男の後ろに下がってろ、は? こういう設定、何かしら残ってるわよね。今は令和、昭和かよ。よりによってわたしにその設定? は?」

 魔女のヒステリーにバトラーはめまいを起こした。


「魔女さん、今のはパワハラという魔法ですね。そのパワーをなぜあのモンスターたちに使わないのですかぁ」

 と、エルフが上目遣いに言う。


「あー、しまった……疲れてHP減ってしまったわ……回復ドリンク……あったあった……」

 と魔女が手にしたのはおどろおどろしい緑色の液体の入った綺麗なガラスの容器だった。


「いつもは栄養ドリンクだけどこれしかなかったのよね……この味、ずっと気になってたけどさ、ゲームの中でしか飲めないからたくさん買っちゃった。さてさて、お味は……」


 ブフーっ! と思いっきり回復ドリンクを吹き出した魔女。ものすごくまずいのだ。人間界でも売り出したのだが、色といい、味といい、飲み物では無い。あれは。

 魔女は気絶した。エルフだけ残った。彼女は媚びる、ぶりっこする、しかできない。

「もぉー、わたし一人だけ? 無理無理、こんなの。よし、リセットー!!!」





 ◆◆◆


 冒険は勇者の名前を決めるところからはじまった。


「画数とか、漢字の意味とか考えてつけないと……」

 まず命名の本を買ってきて選ぶところから。そして職業も選べるが


「将来考えたらどれがいいんだろうか。勇者なんて、王道すぎない?」


 と、口コミを見ながら職業を決める。これだけでもかなりの日数。

「まぁ手堅く勇者、男だな。やっぱ」


 さて冒険の旅へ!

「あ、荷物はAm●zonから届くんだけど特別会員じゃないから、あるものから順次配送だから全部揃うまで待とう……」


 チラッと葉書が落ちた。生命保険加入のおすすめ葉書。

「やっぱ保険かけとこうかなー手続き簡単! まじ?」


 ……


 ◆◆◆


「おい、誰も助けに来ないのか……わしは忘れられているのか?」

 王様は呆然としている。ずっと張り付けられたままだ。

「最近ゆとり教育の影響もあってこんな感じだよ、みんなゆったーりしてる」

 と、見張りは欠伸して言う。

「わしはいつまでここに張り付けされるのだろうか……」


 生贄にされた王様、助けに来るものを待ち続ける。



 いつまで、だろうか……。




 ファイナルイケニエクエスト


 ▶︎はじめる

 ▷つづきから

 ▷せってい

 ▷やめたい



 終

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