第21話 入団試験編 友のために
「ぐわあぁぁあ!!助けてくれぇえ!!!」
南の方角から男性の叫び声が聞こえた。
「行こう!」
「うん!」
3人は声のする方へ駆けていく。
ドシンッ!ドシンッ!
近づいていくと重い物が落とされたかのような大きな鈍い音が響いていた。
「おい!大丈夫か!」
木々を抜けた先に居たのは、23尺3寸(7m)は優にありそうな今まで見たこともないような巨大な怪異物であった。
巨大な足、巨大な手、巨大な口に無数の牙が生え、身体中には大量の目、身体は黒光していた。
「あっ!たった助けて!!」
怪異物の手には1人の男性が握られていて今にも喰われそうであった。
【千年裏真流・
蒼蒔は男性が掴まれている怪異物の腕を切り落とそうとしたが、黒光した甲皮はあまりにも硬く傷一つ付けられなかった。
くそっ!このままじゃこの人が食べられてしまう!!
【千年裏真流・
怪気を込めた突きでもヒビ一つ入らない。
【千年裏真流・
突きの連打を当てようとしたが怪異物は素早く後ろに跳んで避けた。
こいつ!硬いだけじゃなく速い!!
「まーた餌が集まってきたよ、ケケケ」
ニヤリと笑いながら野太い声で言葉を発した。
この怪異物!人間の言葉を話せるのか!!
知能が高い!!今までの獣のような怪異物とは別格だ!!
「一花!ここにいる怪異物は怪異度数2〜5じゃなかったのか!!」
「うーん、私もこんなやつがいるとは知らなかったな。こいつは怪異度数20はありそうだ。」
「一花も手伝ってくれ!早くこいつを倒さないとこの男性が喰われてしまう!」
一花がニヤリと笑う。
「私が手を貸したら君たちは試験失格になるがよろしいか?」
くそっ!こんな時に何言ってんだ!
「人が死んでしまうぞ!」
「君たちは覚悟の上で試験を受けに来たのではないのか?元々死人が出ることは百も承知だろう?」
ダメだ!俺が助けるしかない!!
突きじゃなくもっと威力の高い技じゃなければこの甲皮は砕けない!
【千年裏真流・
右足に怪気を集めて怪異物の腕を蹴り抜く!!
ピキピキッ!!
やった!ヒビが入った!!もっとだ!
【篝火】
2発!
【篝火】
3発!
【篝火】
4発!!
バキンッ!!ついに硬い甲皮の腕が砕け散った!
「ぐわぁぁ!!人間風情がよくも俺の腕を!!」
蒼蒔は男性を手から救出した。
「蒼蒔危ない!!」
幽姫の声が響く!
バキッ!
男性を助けようとした蒼蒔の一瞬の隙を突いて怪異物の左腕の打撃が蒼蒔の脚を直撃する。
吹き飛んで木に打ち付けられる蒼蒔。
「かはっ!ぐぅ」
「ケケケ!バーカバーカ!ざまあみろ!」
怪異物は砕かれた右腕をすでに修復させていた。
ダメだ、両脚の骨が折られている。
もう立って戦えない、このままじゃ全滅だ。
「ケッケッ!それじゃあこっちの生きのいい男から喰ってやろうか。」
蒼蒔に怪異物の手が伸びる。
「幽姫!逃げろ!俺が喰われてるうちに!」
そうだ幽姫だけでも逃がそう。
怪異物が俺に気を取られている今なら逃げられる。
「嫌だ!!蒼蒔を置いて逃げたくない!!」
「俺なら大丈夫だ!逃げるんだ幽姫!」
「嫌だ嫌だ!!」
コツンッ!
「ん?なんだぁ?」
幽姫が怪異物に小石を投げつけた。
怪異物が幽姫の方を向く!
「ケケケ!女のガキがいるじゃねえか!ガキの肉は柔らかくて絶品なんだ!ケケケケ」
幽姫のやつ何やってるんだ!お前が喰われちまうぞ!
「僕は嫌なんだ、、大切な友達の蒼蒔を置いて逃げるなんて、、蒼蒔はいっつも僕を助けてくれたのに僕だけ逃げるなんて嫌なんだ!今度は僕が蒼蒔を護る番だ!!」
幽姫の身体から白色の怪気が溢れ出す!
「お父様、蒼蒔と一花ちゃんになら見られてもいいよね。」
怪異物が幽姫を掴みかかろうと手を伸ばす。
木の上から見ていた一花がニヤリと笑う。
「見せて貰おうか、六大流派【
幽姫から溢れ出た白色の怪気が怪異物の身体を包み込む!
幽姫は右手で怪異物の手に触れると左手で右手の甲を叩いた!
【白雲流・
次の瞬間、怪異物は内側から全身が弾け飛ぶ!!
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