第18話 入団試験編 魚頭

山の奥を進む蒼蒔と幽姫。

「ガタガタガタガタ、そこら中から怪異物の気配がするよぅ、ガタガタガタ」

蒼蒔の着物を掴んで震えながら後ろに隠れて歩く幽姫。

「大丈夫だ、怪異物が出てきたら俺が護ってやるから」

「うぅ、蒼蒔は優しいな〜」

背中に頭をすりすりしてきて子犬みたいで可愛いなと思ってしまう。

「お〜よしよしよし」

思わず頭をナデナデしてしまう。

「えへへ〜恥ずかしいよぉ〜」

「あっ悪りぃ悪りぃ」

ガサガサッ!

「っ!!」

怪異物か!!?

木の上を見上げると試験官の源一花がいた。

「ふふ、試験中なのに随分イチャついているのだな」

「ふぅぅ、怪異物じゃなかった〜」

「べっ別にイチャついてた訳じゃねぇし!!てか何で付いて来てんだよ!」

「言ったろ?私は特にお前らに期待してるんだ。だから上から見てようかと思ってな。」

「ずっと見られてるっていうのも監視されてるみたいで嫌だな。」

「まあそういうな。試験の邪魔はしないからさ。」

「まあいいんじゃない?邪魔しないって言ってるしさ」

「まあ幽姫がそういうなら。」

ガサッ!ガサッ!

「おっ本当に来たみたいだよ2人とも」

「来たか!!一匹目!幽姫!隠れてろ!」

「はぃぃぃいい!!!」

木の後ろに隠れる幽姫。

藍色の怪気を出して構える蒼蒔。

「(ほう、藍色か、おもしろい)」

「グルアアァアアア!!!」

咆哮と共に現れたのは頭が魚で身体が人間のような怪異物であった。

8尺3寸(250cm)ほどの大きさで両手両脚には大きく開いたひれ、全身がうろこで覆われていた。

「来いよ、魚頭野郎!!」

魚頭の怪異物は鰭をバタバタと動かすと空中を泳ぐように突進して来た。

【千年裏真流・いちの手・末摘花すえつむはな

手に藍色の怪気を集中させて突く!!

シュッ!

しかし空中で急旋回して躱された。

魚頭は高速で空中を遊泳し鋭い牙を剥いて再び襲いかかる。

速いな、さっきよりも速い技じゃないと当たらねえか。

【千年裏真流・拾参じゅうさんの手・初音はつね

怪気で手の指を刀のように鋭くして切り裂く!

ザシュウッ!!

向って来た魚頭が中心から真っ二つに両断される!

「ふう、まずは一匹目。」

「やったね!蒼蒔!」

「(ほう、千早稲蒼蒔、野良の手と聞いていたがなかなかやるじゃないか。)」

「今のやつは怪異度数3ってところだな。2発で倒すなんてやるじゃないか」

「この程度なら余裕だぜ!!」

「えっへん!うちの蒼蒔はすごいのです!」

蒼蒔に駆け寄って喜ぶ幽姫。

「よし!やれるぞ!このまま残り4匹ちゃちゃっと倒してやるぜ!」

「(ふふ、そう簡単にいくかな?)」

一花は不敵な笑みを浮かべた。

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