第13話 入団試験編 湯治

第一試験を見事に突破した蒼蒔と幽姫は次の第二試験場に向けて歩いていた。

「次の試験まで4日あるから普通に歩いたら余裕で着くね!」

「そうだな〜ちょっと寄り道してくか?」

「おっ!いいね!いいね!どこに寄るの?」

「たしかこの近くに温泉街があるはずなんだが、、」

「温泉!僕大好きだよ!」

試合は割と余裕で勝てたし、2人とも怪我もせずに済んだが、連日の長旅で歩き疲れていた。

ここらで一度身体を休ませてあげるべきだ。

「あっ!蒼蒔!川から湯気が出てるよ!」

「お!ほんとだな!温泉が近いぞ!」

湯気を頼りに歩いていくと

釜湯沢かまゆさわ温泉】と書かれた看板が見えてきた。

「着いたな」

かすかにゆで卵のような硫黄の匂いが漂ってきていた。

中央に巨大な源泉がいくつもあり、それを取り囲むようにいつくもの温泉や商店が連なっている。

「蒼蒔!温泉饅頭だ!温泉卵だ!もぐもぐ」

幽姫はもうすでに両手に饅頭や卵などを抱えて食べ始めていた。

「早えな!俺にも一つくれ!」

「どふぞー」

饅頭を頬張ると、まだ温かいフワフワモチモチとした生地の中にサッパリと甘い餡の味が口いっぱいに広がった。

「うんめぇ〜〜!!」

「でそー」

しばらく腹ごしらえを済ませたら温泉に入りに行くことにした。

「大小色々な外湯があるみたいだけどどれに入ろうか?」

「僕一番大きな温泉がいい!」

「じゃあ、あそこにするか?」

温泉街の奥に鎮座してるいかにも大きそうなところを指差す。

「うん!あそこがいい!」


戸を開けると中で男湯と女湯に分かれていた。

2人は男と書かれた暖簾をくぐる。

「幽姫は男湯でいいのか?」

「むすっ!男だからいいの!」

脱衣所で着物を脱ぐ。

それにしても幽姫は本当に女の子にしか見えないがちゃんと【あれ】はついているのだろうか?

じっーーーー

「ねえ蒼蒔?変態みたいだよ?そんなに見られたらすっごく脱ぎずらいんだけど」

「あっ!わりぃわりぃ!先に入ってるわ」

中に入ると岩造りの立派な露天風呂があった。泉質は酸性さんせい硫酸りゅうさん塩泉えんせんで源泉を冷まして使っているらしい。

おーどれどれ、湯加減は〜?

「おっ!ちょっと熱めだがいい湯だぁ〜」

ふぅ〜気持ち良いぜ〜


しばらくすると幽姫が手ぬぐいで前を隠しながら入ってきた。

「男同士なんだから隠さなくてもいいんだぜ〜」

「スケベ〜な蒼蒔がジロジロ見てくるから隠す!」

「べっ別にスケベじゃねぇし!」

「ふぅぅぅ〜いい湯だねぇ〜」

「ほんとだな〜景色もいいし疲れが吹き飛ぶぜ〜」

しばらく無言で温泉を堪能する2人。

「ねえ、蒼蒔はさ、なんで御手守師団に入りたいの?」

「あー俺は幼い時に村が怪異物に襲われてな両親が殺されちまったんだ。だから復讐って言うか、怪異物から人々を守ってやりたいって言うかさ、あとは育ててくれたじいちゃんのためってのもあるかな。」

「そうだったんだ、、やっぱり立派だね蒼蒔は」

「幽姫は?どうして入団したいんだ?」

「あー僕はお父様に入れって言われたからかな、入らなきゃいけないって言うか」

「厳しい父ちゃんなんだろうな〜」

「修行に関しては鬼だよ〜普段は優しいんだけどね〜」

「2人で合格しような」

「うん!絶対に!」

温泉を出て近くの宿に泊まりこの日はぐっすりと寝た。


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