第11話 入団試験編 余裕

ドドドンッ!!!

「始め!!!」

太鼓の音と共に試合が始まる。

「おおおぉぉぉお」

石垣一玄の身体から柿色かきいろの怪気が湧き上がる。

鴨原隼音からは淡黄色たんこうしょくの怪気。

「まずは2人で生意気な野良の手から殺ろうぜ!メスガキはほっといてもいい!」

2人が蒼蒔の正面と背後に回る。

幽姫は片隅の方でブルブルと震えて丸まっていた。

チッ囲まれたか。

だったら正面からぶちのめすまで!

「おらぁ!!」

蒼蒔の右の打撃が一玄のみぞおちに当たる。

しかしその感触は人間の肉体とは思えぬほど硬かった。

ニタァ

一玄がニヤける。

「そんなに弱い打撃じゃ俺には通用しないぜ」

【剛寂流】の橙色だいだいいろの怪気は身体の硬度を高める効果があることは知っている。おそらく分家の【剛石流】も同じような効果なのであろう。

しかし蒼蒔は内心笑っていた。

「柔らけえ」

じいちゃんとの修行では毎日巨大な岩を素手で破壊していた。それに比べたら恐ろしく柔らかい。

今度は本気の力を込めて一玄の腹を殴った。

ドゴッ!!

「ぐふぅ!!」

蒼蒔の拳が腹にねじり込まれる。

一玄は腹を押さえてうずくまる。

【残音流・の手・残影脚ざんえいきゃく

蒼蒔の後ろにいた隼音がものすごい速さで蒼蒔の周りを回りだす。

【轟流】の黄色の怪気は腕や脚などの身体の速度を上げる効果がある。分家の【残音流】も同じような効果なのであろう。

蒼蒔はクルクルと回る隼音に目を凝らす。

またもや蒼蒔は内心笑っていた。

あまりにも遅すぎる。

じいちゃんとの修行では毎日雨のように降らされる石をすべて手で掴んで避けていた。

【残音流・いちの手・残音突ざんおんづき】

シュバッ!!

蒼蒔に目掛けて高速の突きが来る。

「遅い!!」

蒼蒔はその突きを軽く受け流すと反撃の突きを隼音の顔面に打ち込んだ。

「グブゥッ!」

隼音が顔を押さえてよろける。

「どおした?お前ら2人ともそんなもんか?」

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