6月25日

第38話 6月25日 木曜日

 授業が終わって校門を左に曲がりそのまま一直線に交差点まで進む。

 今日は信号を待たなくてもいい。

 なぜならそのままスナックのところを左に曲がるからだ。


 そこを直進しコインランドリーの前を通りすぎ橋に突入。

 「ようこそ化石の町へ」の横断幕を横切って橋を渡り終えるとシャッターだらけの商店街になる。


 そこを突っ切り人で賑わう大手コンビニを横目に坂を上っていく。

 ようやく町外れにある地方限定のコンビニに着いた。

 コンビニと中華料理屋のあいだにあるピンクの公衆電話で菊池さんに電話をかける。


 ピンクの公衆電話はテレホンカードが使えないから十円硬貨を使った。

 十円玉を一枚入れて菊池さんが出るのを待つ。

 今日はワンコールで電話に出た。

 そして母さんの状況を確認する。


 こんな日にかぎって母さんの体調は優れなかった、いや、こんな日だからかもしれないけれど……。

 そのまま、お礼を言って受話器を置く。


 僕は公衆電話の横のコンビニに寄っていくことにした。

 この店も入店すると右側が本棚で直進するとトイレだ。

 どこのコンビニもだいたい同じように商品が配列されている。

 ただここのコンビニはレジがひとつでふたりの店員が窮屈そうに並んでいた。


 僕は本の棚の最後尾のところで左に曲がり飲み物が置かれているところのガラスケースを開いた。

 えっと、マウントレーニアを手にとる。

 どんっと重いガラスケースのドアが閉まった。

 っと、やっぱりやめた。

 

 僕は考えるより早くガラスケースの取っ手を掴んでいた気がする。

 そのままドアを開いて手の中にあるマウントレーニアを戻しそのマウントレーニアのふたつ右にあるマウントレーニアバニラモカをとってレジに向かう。

 僕はここのコンビニの電子マネーは持っていないから久しぶりに現金を使った。


 といっても今日は前もってピンクの公衆電話を使う気でいたから小銭は用意してきている。

 左の店員がレジを打ち右の人がマウントレーニアを袋に入れようとしているから僕はそれを断った。

 代わりにシールの貼られたマウントレーニアのバニラモカとお釣りとレシートをもらう。

 

 「ありがとうございました。またお越しください」

 

 僕は一礼を返す。

 母さんはここのコンビニでも「03」の指示でポイントカードや電子マネーを買ってたんだよな。

 そんな思いを抱きながらコンビニのドアを開く――キンコン。キンコン。という音が僕の背中を押してくれた。

 

 目の前の国道を渡りそこから直進して学習センターに向かう。

 深い森のような木々に囲まれたところに建物はある。

 S町の学習センターは図書館を併設していて静かな場所で学習するには最適だった。


 歩道の向こう側にはS町のなかにあっていちばん大きな山が見えている。

 「学習センター」の看板のところを右に曲がると脇の草むらから虫の鳴き声が聞こえてきた。


 それに草や花の匂いもする。

 そのまま舗装された道を進んで行くとU高校の制服を着た女子高生が学習センターの表玄関の前に独りでポツンと立っていた。

 彼女がいることは一目瞭然だ。

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