第24話 6月13日 土曜日⑤

 K市に行った外出気分が抜けなくてそのまま散歩に出た。

 独りで家にいたくないっていうのもあるかもしれない。

 今は地方銀行支店の前の歩道を歩いている。


 対面にはコインランドリーがある。

 今日は土曜日だからけっこう人がいて混んでいた。

 ここからでもベンチに座ってスマホを見ている人が確認できた。


 コインランドリーの端にある緑の公衆電話は誰にも使われていない。

 そうりゃあそうだスマホを持っている人にあの公衆電話は目に入らないだろうから。


 このコインランドリーはコインランドリーになる前は個人商店だった。

 個人商店はずいぶん前に辞めてしまっていて、しばらくは空き店舗だった。

 けれどそこを利用して町外れにある建設会社の人がコインランドリーをはじめたそうだ。

 その緑の公衆電話はその個人商店のときの名残なのかもしれない。


 でも飲食店や個人商店が置く公衆電話はピンク色だったはずだけど、その公衆電話は緑。

 まあ、いっか。

 銀行を通り過ぎ橋を渡っていると橋の欄干に車の排気ガスで煤けた「ようこそ化石の町へ」の横断幕がある。

 化石の町って何度見てももう死んでしまった町のように思える。

 左右にある街路灯の電灯カバーも化石のデザインだ。


 日没後は発掘されたわけじゃない人工的に作られたこの化石たちが橋を照らす。

 S町の化石推しはさらに盛り上がっていくのかな? 新しく開店する店もあれば閉まる店もある栄枯盛衰だ。

 僕は橋を渡り切ったところでさらに進んで右折した。


 せっかくだから学習センターにいって吹奏楽部の演奏を聴いていこう。

 突然、行ったたとしても生徒手帳もあるし水木先生が顧問だから大丈夫だろう。

 っとその前にホームセンターにも寄っていこう。


 アルバイト代はまだだけど僕の持ってるペンライトじゃちょと頼りないから買って帰ろう。

 僕は今、歩いている道をいったん引き返す。

 

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