6月10日

第15話 6月10日 水曜日

 僕は昼休みに職員室を訪れた。

 今日、職員室にくるのは二回目で水木先生にある用紙を手渡す。


 「先生。書いてきました」


 「うん。よし。いいよ」


 水木先生はその紙に目を通すと職員室のうしろの壁にあるカラフルなプレートがついた鍵がかけられているところまで歩いていった。

 その中から銭湯のロッカーキーのようなプレートの鍵を持ってきた。

 緑色のプレートには【コンピュータ室】と彫られている。


 うちの高校の【コンピュータ室】は昼休みや放課後なら使用届けさえ提出せば自由に使うことができる。

 自由といっても学校側であるていどのフィルタリングはしていて大手匿名掲示板や会員登録をしないと使えないサイトはブロックされている。

 僕が調べたいものは検索エンジンで調べられるような簡単なものだからフィルターに引っかかることはないだろう。

 

 【コンピュータ室】に入ってまずどこに座るかを考える。

 廊下側だと誰かが急に入ってきそうで落ち着かないから窓側のいちばん前の席を選んだ。

 ただみんなスマホを持ってるから授業以外で【コンピュータ室】を使う人はすくない。

 パソコンの電源を入れると今の「Windows」じゃなくてひとつ前のバージョンの「Windows」が起動した。

 黒い画面に「Windows」のロゴが現れてからしばらくするとパソコンが使えようようになった。


 このパソコンには誰が入れたのかわかないけど「Chrome」と「FireFox」のブラウザが入っている。

 現在「Windows」のデフォルトブラウザは「Edge」のはずだ。

 学校のパソコンはセキュリティが強固つよいのか甘いのかわからないな。


 こんなに自由にソフトやアプリをインストールできるなら学校のパソコンに何を入れられても文句はいえない気がする。

 それこそウィルスやスパイウェアを仕込まれても誰も気づかないかもしれない。

 できるなら「Brave」をインストールしたいところだけどその中でも使い慣れている「Chrome」をダブルクリックした。

 画面一杯に広がった「Chrome」は初期設定のままだ。


 大手検索エンジンの検索窓に「公衆電話の色」入力してからスペースを空け「理由」と打ってエンターを押す。

 僕は久しぶりにインターネットという仮想の世界にもぐる。

 公衆電話の色についてそれらしい解答がたくさんあった。


 まずは広告を除いた三列目のサイトにアクセスする。

 僕が知りたい情報のあるサイトかと思ったけれど、ただの「雑学まとめ」だった。

 ブラバして四列目のサイトをクリックした。


 どうやらここに僕の知りたい情報がありそうだ。

 マウス片手にホイールを回して画面を下にスクロールしていく。 

 へ~、僕は見たことがないけど世の中には赤い公衆電話ってのもあるんだ。

 「委託公衆電話。電電公社が駅や商店その他に管理を委託していた電話のこと」

 そう書いてあった。


 ただ、電電公社というのがわからなかったので単語をドラッグして右クリックする。

 そこに出てきた項目から『ウェブで「電電公社」を検索』を選びさらにワンクリック。

 タブが一枚増えるとそのタブには「電電公社」を検索したページがすでにあった。

 また広告を除いた下のページにカーソルを移動していく。


 あっ、今度は「Wikipediaウィキ」もある。

 僕はそのまま「電電公社」の「Wikipedia」をクリックした。

 ページの左上にはパズルのピースで作られた球体の上部が欠けたロゴがある。

 この見慣れたロゴ、本物の「Wikipedia」だ。


 「電電公社」のページなのかと思ったら「日本電信電話公社」という項目の「Wikipedia」だった。

 「電電公社」の正式名称が「日本電信電話公社」で通称が「電電公社」ということが書いてあった。

 

 簡単にいえばNTTになる前の会社が「電電公社」だ。

 結局のところ公衆電話を管理しているのは「NTT」ということだ。

 僕が持っているテレホンカードも「NTT」のものだから日本の電話はだいたい「NTT」の管轄ってことかな? 僕は左端のタブに戻ってつぎの公衆電話の色を確認する。

 

 青い公衆電話。

 僕は青い電話も見たことがない。

 「台座に固定されるようになった通常の公衆電話で二十四時間利用可能になった。赤い電話は徐々にこれと交換されていき十円硬貨も十枚入れられるようになった」

 なるほど赤い公衆電話が青い公衆電話に変わっていったんだ。

 

 赤い公衆電話を見かけないのも当然か。

 日本にまだこの赤い公衆電話はあるのかな? そのあたりの情報はなかった。

 ……どうやら黄色い公衆電話もあるみたいだ。

 

 「百円玉が利用できるようになった公衆電話機のこと」

 赤い公衆電話と青い公衆電話は百円が使えなかったのか? 目から鱗だ。

 ふつうの慣用句なのにあの娘の口癖を真似したようですこし恥ずかしかった。

 

 ということはこの黄色い公衆電話は赤から青、そして黄色へと進化していったってことか。 

 なら、赤い公衆電話はなおさら日本になさそうだ。

 僕はさらに画面を下へとスクロールした。

 つぎはピンクの公衆電話。

 

 ピンクの公衆電話は見たことがある。

 町外れのコンビニにも置いてあったはずだ。

 それに大納言にもあるな。


 ピンクの電話はというと「飲食店、店舗の運営者などが設置する公衆電話のこと」

 飲食店、まさに大納言がそうだ。

 町外れのコンビニの隣は中華料理屋だからあのピンクの公衆電話はその中華料理屋が設置いたものかもしれない。

 つぎはようやく僕が頻繁に使っている緑の公衆電話の説明だ。

 

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