第7話 絶対的正義は個々の中

「我ら見えている範囲にしか力及ばない。」


「それじゃ駄目だ。

見えてない範囲もカバーすべきだと思うっ。」


「それは理想論だよ。

出来る事出来ない事区別をつけねばならない。

出来ない事を出来るという事に嘘が生じる。

嘘は落胆を深くする。

ずる賢く立ち回らねば滅びる。

我らも生物だ。

遺していく事を優先する。

それはぶつかる事もある。

清く正しい事がいつも正義ではない。」


「そんなのっ言い訳だっ

それでもっ

そこに夢を見て

夢を形にしようと動く事

そこに本当があるっ。」


「野望は持っておいた方が良い。

ただ、呑み込まれたら駄目だ。」


「野望なんて汚い言葉は嫌いだ」

「では理想か?

所詮言葉遊びに過ぎない。

分かってるだろうに.」


ふーふー肩で息をしながら

目だけ上げて見ていると

ははっ

父は笑った。

「絶対的正義は個々の中にしかない.

その正義も揺らぐ.

何処まで追い求める.」


「それでもっ!

それでもっ!!」

「やって見せろ」

と言った。


「歴史は繰り返す。」

天を仰ぎながら言う。

「業が業で戻ってくる。」

「業とは。」


「それぞれが

負って生きる。

軽くなり重くなり

楽しくなり苦しくなり

嬉しくなり悲しくなり

進めなくなった時

終わる。

ただ、それだけだ。


逃げも隠れもしないよ。

何時かクツに討たれるかもしれないと

思いながら生きてきたが、

ここにも理由が落ちていると

気が付かない訳が無い。

もう謝り尽くした。

出来る事は全てやった。

後悔はない。

お前は命を受けて、どうだった?」


急に降って湧いた問いに動揺する。


「冷たい地面の記憶しかない。

小さい頃は、そこだった。

空腹だった

独りだった

何も無かった


だけど」

「だけど?」


「取り返すような日々は

生きてた。

言葉や食べ物や心を触れて与えられて、

しっかり地面踏んで立てる様になってきた。

幼い思い出が必要な事では無いとは思うけど、

今ちゃんと生きてる。

恨まないとは言えないし、

こんの糞っ親父だし…」


溜息を付く前のような顔が目に入る。


「恨みたくない気持ちもある。

難し過ぎて複雑。

何?

父は俺に殺されたいの?」

ニヤッと笑っていったら

「いや?」

っとニヤリ笑い返された。


「俺、波乱万丈で俺にしか耐えられないと思う。」

言ってみて笑えた。


「ほぉ。」

としか反応が無かった。


誰かが見せてくれるものを、

ただ待ってるだけだなんてかっこ悪すぎる。

自分で自分が動力源で掴みに行きたい。

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小さくは無くなった魔王様ジュニア 食連星 @kakumi

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