【4話 生存者】

 春奈は寝転がっている人間やアンドロイド達の横を通っていく。


 そして、正面奥には小さいけれど人影が二つ増えていた。


(ん、ん? ん!? 誰かいる!? しかも、歩いてる! 今の状況について話を聞きに行かなきゃ!)


 春奈は微笑み、手を振りながら人影に向かって走り出す。


「すみませーん! すみませーん!!!」


 二つの人影は春奈の呼びかけに反応することなく、変わらない速度で歩き続ける。


 そして、二つの人影を見つめながらこわばった顔を浮かべる春奈。


(あれ? 反応してくれないな。いや、うん……こんな状況じゃまともな人なんて居ないだろうし仕方ないよね)


 春奈は硬い笑顔を作りながら二つの人影に駆け寄っていく。


「あの、すみません! わたし、さっきまで間抜けにもぐっすり寝ちゃってて。今ここら辺で何が起きてるのかさっぱり分からなくて」


 二人組のうちの一人は人間の男性で二十代なかばに見える容姿で、黒い髪は短めに整えられていて清潔さがあった。


 もう一体は二十代前半に見える美しい容姿のアンドロイドで、黒い長髪をしている。


 そして、短髪の男性はかわいた笑みを浮かべた。


「死体、それに、残骸! 綺麗な道だなぁ……お前もそう思うだろ?」


「えっ!? これのど――」


 女性型アンドロイドが無表情のまま会話に割り込む。


五郎ごろう様、初対面の人にいきなり物騒な話は止めましょう」


 五郎と呼ばれた短髪男性は口の端を上げる。


「チェルシー、お前も素直になれよ。お前だってこの光景が美しいとは思わないか? あぁっ!?」


 チェルシーと呼ばれた女性型アンドロイドは眉尻を下げながら首を横に振った。


「ワタシには理解することはできません。けれど、異常な光景なのは理解できます」


「そうだろ? チェルシーも分かってくれるか!」


 眉尻を上げながら春奈に人差し指を向ける五郎。


「それで、お前は何で理解できないんだ、あぁ!? 脳みそ詰まってるのか!? おい! お前の頭は大丈夫なのか!? 大丈夫なのかぁっ!」


 五郎はこわばった顔をしながら春奈の両肩を強く掴む。


 一方、顔をしかめさせながら息を漏らす春奈。


(いたっ! 強いよ!)


 春奈は硬い笑みを作りながら呟く。


「わたしは正常です! お兄さん落ち着きましょう! 落ち着いて話をしませんか!?」


「落ち着くのはお前の方だ!」


 そして、五郎は額を春奈の額に勢いよくぶつける。


「この美しい光景を理解しろぉ!」


「ふぉあっぐ!」


 春奈は両目を閉じながら勢いよく後ずさった。


 一方、女性型アンドロイドは春奈を凝視しながら佇む。


【不明なデータを受信。……感染確率60%。……無事に除去。異常なし】


 女性型アンドロイドは姿勢を正しくしながら路上で立ち尽くす。

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