ヒル

俺の前でミアがあいつに殺されたと言うか

ミアはまたいるべき場所に帰ったと言うか。



「よぉ、サマエル」

そう、こいつがミアを刺した。

「主様。なんでそんなにも余裕なのですか?もしかして私には勝てないと

諦めてらっしゃるのですか?」


サマエルは’’にやにや’’した顔で言う。


「お前に負ける気がしないからな」

お前なんて余裕みたいな顔で言い返すと

サマエルの顔が明らかに怒りに満ちていた。



「そんな戯言を言えるのも今のうちにですよ」

サマエルから今まで感じたことがないような魔力が湧き出す。


「どうですか私の力は?」


俺が無言でいると

「もしかして怯えてしまいましたか?」

サマエルは挑発してくる。



俺はそんなことを無視して聞く。

「お前がアマラスを洗脳したのだろ?」


「もちろん」

自信満々にサマエルは言った。


「まぁ良い。時期に主様も彼等のところに行くのだから」


シャキン

そう言いサマエルは黒い剣を構えた。



「俺もやっとこれで達成だからな」

「何を言っている?」

怪訝な顔をして言ってくる。


「いや、こっちの話だよ」

「主様。ここにくる前と雰囲気変わりましたね」

「いいよその話は。早く始めようか」


俺がそう言うと

シャキン


目の前を剣が通った。俺は間一髪で避けたが明らかに俺が知っているネクロの部下であるサマエルとは似ても似つかないほど身体能力が上がっている。


『まぁ、全部知ってるんだけど』

シャキンシャキンシャキンシャキン

「避けてばっかりだと私に攻撃を当てられませんよ」

ケラケラ笑いながら俺に言ってくる。


スパッ

ドバドバドバーーーー


剣が握っていた手が斬られて血が溢れ出ている。

「き、貴様ーー。何をした!!」

「魔力を手に集めて手首を斬っただけだけど」


「なんでそんなことができるのだ!この世界ではそんな事をできる人間なんているはずが…」



「うるさい」

スパッ


「貴様まさか…」

サマエルは塵となり消えていった。


さてあいつはそろそろここに来てるかな。


…………


…………




「シーア出てこいよ」


俺は自由行動でここにはいないはずのシーアを呼ぶ。


「あるじー、よくわかったね」


シーアが城門の方からひょっこり出てきた。


「辞めろ。その呼び方」

「なんでそんなひどいこというの?」



泣き顔でシーアが言う。



「おい、神。早く次に行かせろ」


「あれ記憶が戻ったのね」


さっきまでの泣き顔は嘘だったのかケロッとした顔で言う。


「そんな焦らないの」

シーアは微笑みながら言う。


パチン

シーアが指を鳴らすと目の前に真っ白な扉が出てきた。


「さてヒル君。いやもう記憶が戻ったらカイト君でいいか」


「カイトでいいよ」

そう俺の名前はカイト。


さっきまではヒルとして神が作った世界に

送られていた。



『勿論、記憶を消されて』


神からサマエルという堕天使がこの世界で

悪さをしているから消してほしいと

依頼を受けたのだ。



ヒルという人物はこの世界に生きていて確かに王国軍に殺された。


しかし、ミアという人物はそもそもこの世界には存在しない。ただ、神がこの星の全生物にミアという人物は存在していることにしたためミアがライト村の出身だと言うことに

誰も違和感がなかった。



そして俺はヒルという人物の記憶を受け取り

神から復讐するための力を貰った。




勿論、タダでこの仕事を引き受けているわけではない。


俺は神の後ろに続き真っ白な門をくぐる。


「お待ちしておりました」

そこにはアマラスがいる。


「おつかれアマラス。良い仕事したね〜」


シーアこと神はアマラスに抱く。


そして俺を見ると

「よく私を倒せましたね」

アマラスが俺に言ってきた。


「そりゃあ沢山食べたからね」

「アハアハハハハ」


この言葉に神は満面の笑みで笑った。


「ごめん。次からは考えて行動するから」


「良いよ良いよ。次もどうせ記憶を消して

送り込むから気にしないで」


神は手をヒラヒラさせながら言う。


「じゃあ次の依頼だね」

「ああ」


神は俺の耳元でヒソヒソ誰にも

聞こえないように言った。


「わかった」

「じゃあ記憶を消すね」

パチン

神が指を鳴らした。



…………



…………





「あれ、俺はなんでここにいるのですか?それに俺の名前はなんで言うのですか?」


どうやら成功したようだ。

「君は不安な交通事故で死んじゃったから異世界で暮らしてほしいと思って」


「え!異世界に行けるのですか?」


カイト君がキラキラした目で見てくる。

「もちろん。ただ今のまま行っても死んじゃうから膨大な魔力と闇魔法が使えるようにしたよ」


「闇魔法?」


「うん。珍しい属性だからあの世界だと奇怪な目に晒されると思うけど使う分には最強だから気にしないで」


「わかりました」

私はカイト君がそもそも持っていた

膨大な魔力とサマエルが持っていた

闇魔法を使わせることにした。



勿論いまのカイト君はアンデットではなく

普通の人間であり、生物を食べることで

前のような力が手に入るわけでは無い。


そもそも記憶を消した彼はそんなことは

知らない。



「そうだ。君にお願いがあるのだけど」

私はアマラスに聞こえない声で彼に囁いた。


「もちろんやります。任せてください」


いつものカイト君らしい。

「うん任せた!それと何か質問ある?」

「これはどうすれば自分の能力が観れるのですか?」



「こういう風に見たい時に見れるよ」


私は実際にやってみた後にカイト君に

しっかりとステータスの見方を指導した。


「わかりました。ありがとうございます」


これがカイト君のいまのステータス。

———————————

LV80

攻撃力 500

防御力 400

魔力 250000

属性 闇

スキル(召喚士)

———————————


このステータスは結構強いから死なないでしょう。

前の世界での君の成長に感謝しなくちゃね

カイト君。


「さて、あとは実戦だけどあっちの世界に行って試してみて」

「わかりました」

「ちょっ、敬語やめて。話しづらい」


さっきまで敬語を使わないからと話していたから居心地悪い。




「わ、わかった」



カイト君はぎこちないが敬語をやめた。

『記憶を消す前のカイト君と全然違うわ』


パチン

私は真っ白な扉をこの空間に出す。


「じゃあ行ってらっしゃい」

「え!何この扉?」


「この扉をくぐると異世界にたどり着くわ」

「このまま良いのか?」


「うん!頑張ってね!!」

「おう!」


カイト君は扉をくぐり終わり扉が閉まる。

バタン

「あ、言うの忘れてた」


「何をですか?」

アマラスが聞いてくる。


「いいや、気にしなくて良いよ。

どうにかなるでしょう」


じゃあがんばってねカイト君。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

村を失い復讐者になった少年 さまえる @samaeru36

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ