第二節【私】
私は溜め息を吐いた。
うちの子、とは名ばかりのペット、今年の8月に家に迎え入れたハムスターに宛てた小説を書こう、と決意したは良いものの、彼に対してどう向き合ったらいいのかは謎だらけである。
まず、意志がない。彼の行動指針と言えば、食う寝る走る、の何れかである。何かアピールが始まったと思えば、ご飯かおやつの要求。夜、電気も消え寝ようとした頃にガサゴソと聞こえるなと思えば、ずっと回し車の中でカラカラと走っている。生物の最低限の欲求さえ満たされれば良い、そんな呑気さを感じる。
また、コミュニケーションなるものが存在しない。彼が日頃何を考えているのかを知る術が無いのだ。手を差し出しても、興味を示したと思ったら無視する時もあれば、すんなり手の上に乗ってくる時もある。そして私は大抵の場合、その小さい身体から溢れ出る可愛さに魅了されて、甘やかして、ついついおやつを与えてしまう。結局、この私の行動が彼にとってどういう影響を与えているのか、解ることはできない。まぁ、体重含め健康面は除くとして。
「ふみちゃん、来たの」
あ、再生するなら、
「ふぅみぃちゃぁん来たのぉぉぉぉ!?!」
である。我ながら親バカだ。
いや、そもそも親……なのか?確かにうちの子と呼ぶ他無いし、私は彼を家族の一員だと認識しているが為に、自分のことを彼にとっての【母親】として考えている。食べ物や住処を与えているのは他でもない私であるし、差し支えないとは、思う。
彼にとってはどうだ。ハムスターの成人は実は生後3ヶ月と言われているが、産みの母親の下で育つ期間は更に短く、早くて生後1ヶ月でお店に並ぶ子や譲られる子が多々居る。
宛書とは。 友稀-Yuki- @Kei-24
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。宛書とは。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます