第10話 本当の友達

 翌朝。


 つぐみに何度も電話をかけたり、メッセージを送ったり。わたしは一睡もできなかった。よろよろと登校の準備をする。このまま、寝てしまおうか迷ったが学校につぐみの手がかりがあるかもしれない。


 高校に登校すると隣にあったつぐみの席がなくなっている。今更、驚くことはなかった。少し冷静になろう。


 つぐみが消失したのは、このサービス終了のメッセージが届いてからだ。


 差出人は『090・××××・△△△△』である。


 直接かけるのは怖いな。検索をかけてみるか。


『流星館生徒会』


 この高校の生徒会だ。かなり困惑するが。よし、乗り込むか。屋上にある生徒会室に向かうと誰も居なかった。ここは生徒会長の正美に電話だ。


 今から思えば正美の存在は不自然である。


『生物準備室で待つ』と言われた。


「ようこそ撫子。正美君、客人にお茶を出したまえ」


 琴崎先生が豪華な椅子に座り正美さんに指示を出す。


「琴崎先生やはり貴方が黒幕ですか」

「その通り、友情ゲームは面白かったですか?僕は心配していたのだよ。君はいつも独りで空を眺めていた」

「ああ、こうして徹夜でこの生物準備室にまで来ている」


 わたしは出されたお茶をすする、威圧する琴崎先生に本当は怖くて仕方がなかった。


「フフフ、君はそこで座っていたまえ」


 琴崎先生はスマホを用意してつぐみとわたしの友情度を測る。


 「『98%』ですか、では、早速……」


 琴崎先生はVRゴーグルを手にして付けよとする。


「琴崎先生、98%の友情度は危険です」

「うるさい、完全ヒューマノイドを失って、なお、この生物準備室まで来たのだ、気持ち良いに決まっている」

「ヤレヤレ、どうなっても知りませよ」


 正美はVRゴーグルを付けた琴崎先生に見捨てた様に言う。


「何だ、これは、意識が逆流する!」


 その言葉を最後に琴崎先生は固まってしまう。


「琴崎先生はもうダメです。撫子さん、あなたにはこの住所をお渡しします」

「これは……」

「つぐみさんの住所です」

「イヤ、要らない、代わりに名無しの親友の墓地の住所は分かるか?」

「中学生として実在する。つぐみさんより、名無しの親友の眠る墓地ですか?」

「ああ、また、名前を忘れてしまってね」

「わかりました」


 正美はスマホを使い何やら操作しているとメッセージが届く。


 これでこのゲームも終りだ。


***


 わたしは白い花を持って路線バスに乗っていた。今日は名無しの親友の命日だ。あの日も今日の様に暑い日であった。地区大会の決勝の日、彼女はこの世を去った。


 墓地に着くと先客がいた。一目でつぐみだとわかった。あの正美め、よけいな事して……。


「撫子ちゃん?」

「ああ、つぐみか?」

「はい」


―――……。


 少しの沈黙の時間が過ぎる。ここは正美のはからいを素直に受けよう。


「つぐみ、中学生の引きこもりでもいい、友達にならないか?」

「こんなわたしでもいいの?」

「勿論、問題ない」


 名無しの親友の墓標に置かれた白い花が印象的であった。彼女もわたしの幸せを望んでいる気がした。わたしは名無しの親友の冥福を心から願った。


 ありがとう、親友


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本当の友達は必要ですか? 霜花 桔梗 @myosotis2

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