第9話 サービス終了のお知らせ

 その世界は白かった、全てが無い世界であった。有ったのはテーブルの上に乗った白いリンゴである。ふと、白いリンゴに触るとボロボロと崩れる。


 この世界でわたしはざんげする。宗教とかそう言う類のモノではない。名無しの親友の呪いに近い。そう、縛っているのは自分自身だ。


 薄白からの感覚が戻る、どうやら目が覚めたらしい。やはり白の世界であった。


 白い天井に、白いカーテン、白い……。保健室であった。


「目が覚めた?」

「はい……」


 今日二度目の保健室である。時間は放課後に入った直ぐであった。そして、保健の先生はリンゴの皮をむいている。


「なにか、悩み事があるのかな?」

「わかりますか?」

「その悲しみに満ちた表情からは希望が見えている、答えは出ているはずよね」

「ええ、新しい親友ができたの」


 名無しの親友か……まるでラスボスだ。わたしはスマホを確認する。


 親から要、返信のメッセージが届いている。流石に二度も保健室で寝込んだからだ。あー現実世界に戻ったのである。わたしは皮のむかれたリンゴを食べるとつぐみを探す。


 スマホにはメッセージも着信もない。ここはこちらから送ろう。メッセージでいいか。


『今、起きた』


 確かに今、起きたで間違いがない。少し迷ったが送信と。


 今日の保健室騒動は心の傷を露わにしていた。名無しの親友に苦しめられたのだ。しかし、今夜は平和だ。名無しの親友など関係ない静かさだ。メッセージアプリをいじっていると。


 名無しの親友は『晶子』の名前が残っていた。何故、忘れていたのであろう?


 変な気分だ。


 あれ?突然、思い出したのに、また、記憶が錯そうする。


 『晶子』って誰だっけ?わたしを苦しめるのは『名無しの親友』である。しかし、『晶子』ではない。晶子はわたしを苦しめたりしない。


 わたしは引き続きスマホ片手に暇を潰す。友情度の判定アプリが目に留まる。測定……。と。『92%』か、かなり高い気がする。


『βテストの終了のお知らせ』


 何だ、このメッセージは?さらに色々なメッセージが続く。


『このサービスはβテストの為に料金は発生しません』

『完全ヒューマノイドは名前のある親友と等価交換です』


 なるほど、それでサービスが終わって晶子の名前を思い出したのか。確かに最近まで『晶子』の名前を憶えていてつぐみと等価交換で忘れていたのか。


 サービスの終了?


 わたしはつぐみのスマホに電話をかける。


『おかけになった電話番号は現在使われていません……』


 え?



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