第34話

 その明けた朝。

 ベッドの上。

 寝起きの私に、皇子は嫉妬までしてくれた。


「あの二人は何なのだ」と。


「忠義をもって仕えておるは分かるが、近すぎないか」と。


 私はふくみ笑いを浮かべて答えた。もちろん父上の如くの「衆道」との野暮な表現は用いなかった。当然、事実をありのままに伝えた。


「あの二人は恋人同士なの」


 皇子は一瞬たまがった顔をしてみせ、

 

 そうして、安心したのか、

 

 あるいは、自らの勘違いを愚かしく想ったのか、

 

 あるいは、私のふくみ笑いが移ったのか、

 

 にこやかな笑顔を浮かべ、

 

 更にはオハヨウのキスまでしてくれた。

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