第2話

 私はとりあえず進言した。


「公爵領の防備を固めた方がよろしいのではないですか」


 いつもの食事時のこと。今回は朝食のときだった。すると、父上はこれまでに見たことがないほどに、目をキラキラさせた。

 

 うーん。バレておったかと想わざるを得ぬ。


 父上は、食事時、私が――つまりエリザベトね――同席するのがうれしいのか、色色と軍事や政治のことを私へ語り聞かせるを、常としておった。


 私は私で、同年配の男女としての正しき対応――つまり、話は聞きながらも、内心は料理に占められ、舌鼓を打つをもっぱらの楽しみとしておった。


(それはそれ、父上の仕事なのだ。私の仕事は食べること)


 などと想いつつ。そのながら聞きが、すっかりバレておったのである。


 ようやく、娘がそうしたことに関心を持つようになったか。その瞳は、まさにその喜びにあふれたのであった。


 今まで一言も言わなかったけど、エリザベトは公爵の一人娘で、他に子供はいない。つまり跡取りなのであった。ゆえに、その喜び振りもうなずけるものと、私も当人ながらそう想う。


 父上は、食事中にもかかわらず、早速、配下を呼び出すよう、近侍の者に命じた。


(あらー。他の時にすべきだったな。配下の方の朝ご飯、完全に邪魔しちゃったな)


 でも、父上とは食事の時にしか会わないし・・・・・・。


 まあ仕方ないか。


 父上も食事を楽しんだ後に、配下を呼び出せば良いのにと、そう想いはするものの、確かにこれは『善は急げ』で早急に動いた方が良く、結局、父上が正しいということなのかな。何せ、国の大事だもの。


 ただ、これで1つの備えはできた。

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