第3話

 私が、ながら聞きしたところでは、


『公爵領というのはかなり大きく、全国土の4分の1ほども占めた。軍勢に至っては、国軍の3分の1ほども有しておるとのこと。また尚武しょうぶの国とのことであった』


 これらを語る時、父上は誇らしげであった。特に『尚武』のところは。


『また、そもそもは独立国であり、先代にて臣従したに過ぎない。つまり国の属領としては浅い歴史しか有しておらぬ』


 ということであった。


 父上は『臣従』と言った時、声がかすれた。想わず、私が顔を上げると、父上は苦虫を噛み潰した如くの顔をしておった。


 私が驚き、さらには目を離したのもあって、スプーンですくいかけておった何かが転げて行った。それもあって、この時のことは良く憶えておった。


 父上は、先代の臣従の判断には反対だったのだろうか。とすると、臣従を快く想わぬは父上だけではないかもしれぬ。


 そして、そうならば、独立国たらんとする気概と戦意が残っておるかもしれぬ。 とすれば、少なくとも備えをしておれば、多少は持ちこたえられるはずであった。


 これが、私が進言した理由であった。




 他方で、この点から見ると、ゲームであっさりと国軍が進駐できたのは、とても不思議である。


 果たして備えがなかったのか?

 

 でも、少なくともエリザベトは叛乱の決意を固めて、敵国の皇子の下へ赴いたのだから、公爵領は当然防備を固めたはず。


 このことは、正直、謎だった。

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