第4話 

 でも、ここは乙女ゲームの世界。


 婚約破棄→断罪処刑→ヒロインと王太子の結婚は確定ルート。


 その前提が、エリザベトのみさおの喪失なら、どうあったって、それを奪うべく、ゲームは動く。そして、その下僕たる王太子ならびにその親友たちは、実行役として動くはず。王太子が手紙に記した『汝の下僕』など大嘘だろうと想う。


 とはいえ、これはまだ私の想像に過ぎない。何か確証がある訳ではなかった。


 他方で、この手紙をまったく無視することも良くないと、私は考えた。つまり、私が王太子の依頼を断ったということで、王太子が激怒する。そしてそこから二人の仲がこじれて、婚約破棄ということもありえなくはない。


 ならばと、両にらみで動くとの結論に、私は達した。


 親友たちの訪問は受け入れる。


 他方で、その際に百名ほどの護衛隊を少し離れたところ、ただし相手の目に入るところに待機させる。同席させることができれば、最も安全なのだろうが。そうするには、なにがしかの理由が必要と想われ、今はそれが無い。


 ただこの策でも、よしんば良からぬたくらみがあったとして、それを実行に移すのを抑えられるはずであった。これには父上の協力が必要だった。ゆえに、それは後でお願いするとして。



 ただそれとは別に、私自身、何かを見落としている気がした。それが気のせいなのかは、はっきりしない。


 しかし、そもそも乙女ゲームがシナリオに修正を加えて来る――現時点ではあくまで『かもしれない』であるが―などとは、

――つまり今回の如くの手紙を送りつけてくるとなどとは想いもせず、

――喜び浮かれ、期待に胸ふくらませておった私である。


 初日の『ベッドゴロゴロ』に加えて、一月ほど前の『である連呼』と来れば、まさに『あほう』確定の私である。何であれ、見落としがあっても、何の不思議もないのだが。とはいえ、『断罪エンド』確定だけは、何としても避けたいのであった。

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